
日米関税交渉に向け、政府が交渉材料の検討を進めている。トランプ米大統領は、SNSへの投稿で、日本の自動車検査を「ボウリング球試験」と呼んで非関税障壁の一つと主張。中野洋昌国交相は、閣議後記者会見で自動車の衝突試験について、歩行者の頭部を保護する目的があることを説明し、「国連で策定された基準だ」と反論した。
トランプ氏は第一次政権時から「ボウリングの球を落として、車体がへこんだ車は不合格になる」と誤認に基づいた批判を展開。国交省は改めて「ボウリング球を使った試験はない」とし、国際基準に則った手順で安全試験を行っていると訴えた。
日本と米国は、自動車の安全を巡る基準も環境も大きく異なる。日本は欧州連合(EU)などと同様に、国連協定に加盟し、協定に基づいた43の基準による認証制度を設けている。協定では国同士が相互に承認することで、輸出入に伴うコストや手間を省く。
しかし、米国は相互承認のための協定には加盟しておらず、日本やEUのように、新たな自動車を販売するための認証制度がない。独自の基準は持つものの、自動車メーカー自らが基準への適合性を確認するのが基本。
道路事情も大きく違う。細かい路地が多く、人との接触事故が多い日本では、歩行者の安全確保は欠かせないが、土地が広大な米国では、人との接触についての基準が設定されていない。
そのため、安全基準の緩和というよりも、日本への輸入自動車に求められる検査で重複するものなどについての簡略化を検討するとみられる。すでに米側は日本から輸入する自動車に対して追加関税を発動しており、早期に適用除外を勝ち取ることは業界の優先事項だ。
「米国の貿易赤字削減につなげる交渉材料を揃えるには、他の省庁とも連携して幅広い交渉を行ってもらう必要がある」(省関係者)との声が出ている。