米国トランプ政権発足からの100日を振り返る
米国のトランプ政権の発足から100日以上が経過した。半導体などテクノロジー業界の間では、トランプ大統領がバイデン前政権下で激化した米中半導体戦争にどう向き合っていくかに注目が集まっていた。しかし、1月20日以降のトランプ政権の対中姿勢を眺めてくると、やはり中国に対しては妥協の余地はなく、技術革新における対中優位性を堅持することに躍起になっていると判断できる。
それは、これまでの対中関税からも明らかだ。トランプ政権は2月上旬、中国からの全輸入品に10%の追加関税を発動し、中国はそれへの対抗措置として、原油や液化天然ガスなどに10%から15%の追加関税を導入した。それに続くように、トランプ政権は3月に追加関税を20%に引き上げ、中国はとうもろこしや大豆、牛肉など農産物に10%から15%の追加関税を導入した。さらに、4月には中国からの全輸入品に84%の関税が打ち出され、中国も同様の報復措置で対応したが、トランプ政権はその直後に追加関税を145%に引き上げ、中国もすぐに125%に引き上げるなど、報復の連鎖が続いた。
ここで重要なのは、トランプ政権が先制的に対中攻撃を仕掛けているだけでなく、初めから一律関税で対応しているという現実だ。ここからは、中国による報復を恐れる気配はなく、中国に対する政治、経済的な優位性を保つためにはあらゆる手段を使うという、トランプ大統領の強い意志が見え隠れする。
中国は最初の2回は特定品に標的を絞った限定関税で対応していることから、トランプ政権の対中強硬姿勢は前もって予測していたにしても、トランプ政権の対中姿勢をひとまずは眺めようという意識があったと思われる。しかし、先制的な一律関税の連鎖が止まらないと判断してからは、中国も米国に対して一律関税で対応するようになっている。トランプ政権の対中強硬姿勢は変わらないと判断したのだろう。
規制強化へと進む対中半導体政策
そして、当然ながら、半導体分野もこの影響を受けることになる。例えば、米国半導体大手のNVIDIAは4月、トランプ政権による対中半導体輸出規制の強化を受け、中国市場向けに性能を調整したAI半導体「H20」の輸出にもライセンスが必要になったと明らかにした。同様に、AMDも4月、AI半導体「Instinct MI308」の中国への輸出が許可制になるという通知をトランプ政権から受けたことを発表した。