米国トランプ政権は4月2日、世界に向けて「相互」関税の導入を正式に発表したが、輸入乗用車と小型トラックについては、別途一律25%の追加関税が課され、エンジンなどの自動車部品にも同様の25%の追加関税が5月3日より課されることになっている。
また、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)に準拠する車両および部品については、「米国産」と分類されない部分に対してのみ25%の関税が課されることになっている。この措置の具体的な審査および適用方法については、米国商務省および関税局による正式な手続きを待っている状態だが、全体として、車両であれ部品であれ、米国産部品の存在が今回の鍵を握ることとなっている。
ところが4月14日(米国時間)になって、トランプ大統領は「自動車メーカー(OEM)の一部を支援する何らかの方法を検討している」として、自動車部品の生産をメキシコやカナダから米国内生産に切り替えるまで時間がかかることを配慮すると語った。軽減措置の適用期間や一時停止の可否など具体的な話は避けたが、業界からはいずれにせよ、関税がいずれは課されることには変わりはないとの見方があるという。
調査会社のTrendForceによると、自動車メーカー各社の影響は、米国での組み立て比率に基づいてある程度算出できるという。
米国で販売されている自動車の米国内生産比率をブランド別で見ると、100%のTeslaのほか、Fordが約76%と高い。また、ホンダとStellantisが各約60%、SUBARU、GM、トヨタが平均約55%だが、現代自動車、Kia、VolksWagen、マツダ、VolvoCarsはいずれも40%を下回っており、そうした企業が関税の影響を受けやすいとする。
また、USMCAは自動車部品に特定の地域原産地価値(RVC)を課し、自動車メーカーの最終組立地に影響を与えるが、米国、メキシコ、カナダで組み立てられた車両は、USMCAの要件を満たす可能性が高くなる。TrendForceでは、Fordとホンダが米国での組立率の高さと、主にメキシコとカナダからの輸入の恩恵を受けていると指摘している。
GMは主にメキシコから、トヨタはメキシコとカナダを合わせた輸入量が日本からの輸入量とほぼ同量であるが、SUBARUは日本からの輸入が多いため、関税の影響を受けやすいとみられる。また、現代、Kia、マツダ、Volvoは主に米国外の工場に依存しており、メキシコやカナダでの生産はわずかであるため、関税の影響が深刻になるとみられ、TrendForceでは、関税の影響緩和に向けて各社が米国での生産を拡大することが考えられるとする。
TrendForceでは、米国自動車市場における関税関連の不確実性は数年は継続すると予測しており、短期的には、自動車メーカー各社は、米国工場での生産量を増やすとともに、自社車両の米国部品調達率の向上に取り組むことが予想されるとする。一部の追加関税はすでに発効しているが、主要な実施の詳細は未解決のままであり、交渉は継続中だが、これらの規則の複雑さを考えると、各メーカーが戦略を策定しなおすための時間が必要で、今回のトランプ大統領の関税緩和発言は、こうした自動車メーカー各社の対応や業界団体の要望に一部配慮したものとみられる。