ウェザーニューズは、災害時に活用されるドローンやヘリコプター向けの新たな運航安全管理システムを開発すると4月3日に発表した。
また同日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などと共同で、国の「経済安全保障重要技術育成プログラム」(通称:Kプログラム)の研究開発ビジョン(第一次)で課題設定された、「災害・緊急時等に活用可能な小型無人機を含めた運航安全管理技術」に応募し、採択されたことも発表している。
内閣府と文部科学省が公開している、「災害・緊急時等に活用可能な小型無人機を含めた運航安全管理技術」に関する研究開発構想の文書では、災害・緊急時に人命救助や被害確認などの初動対応の効率化・高度化にあたっては、小型無人機(ドローン)への期待が大きいと説明。
しかし、有人機(ヘリコプター)とドローンの間で情報共有し、自律的な衝突回避などを行うための運航安全管理技術は確立されていない。このため、安全確保の観点から、ヘリコプターとドローンは同じ空域を飛べないという。
救援物資の運搬や要救助者の捜索などを同時並行的に行うためには、ヘリコプターと多数のドローンがお互いの位置や飛行速度を共有し、自律的な衝突回避などをシステム化する運航安全管理技術が求められる。
ウェザーニューズは、複数社でさまざまな運航安全管理システムの研究開発を進めるなかで、2025年度末までに「AIリスクアラートシステム」や「低高度航空気象観測システム」、「低高度4次元高精細気象予測運用化技術」の実用化をめざし、災害発生時や緊急時に活動するドローンやヘリコプターの安全な運航に必要な新たな航空気象システムを開発する役割を担っている。
また、これらの航空気象データをAPIとして提供し、JAXAらが開発している運航安全管理システムに連携させるとともに、航空事業者やドローン事業者専用のウェブサイトで提供することも予定している。
実用化をめざしている各技術の詳細は、以下の通り。
AIリスクアラートシステム
発生場所や時間を特定しにくい、ゲリラ雷雨を含むさまざまな気象条件下で安全に運航できるよう、予測の時間的・空間的なズレをAI(人工知能)技術で補正する技術を開発。飛行ルート上の気象リスクを自動判定して通知するシステムも開発する。さらに、常用飛行ルート上の気象リスクを自動で予測し、最も安全な航路を推薦するシステムも開発予定。
低高度航空気象観測システム
災害時は人が立ち入れない隔離地域や、既設の気象観測機では把握しきれない上空の詳細な気象情報を把握する必要があるが、すべてのドローンに気象観測機を搭載されているわけではない。そのため、上空150m以下でホバリングするドローンの機体姿勢制御データから、風による揺れの影響を解析するシステムを開発。ドローンで運ぶペイロード(貨物)への影響を最小化する。
低高度4次元高精細気象予測運用化技術
低高度を飛ぶドローンは、構造物の影響や地形の影響で発生する乱流で安全が脅かされる場合がある。そこで、ビルなどの3次元構造を考慮した5m四方の細かさで、都市部の風をタイムリーに予測するシステムを開発。現在、同社が運用している5m四方の超高解像度モデル(都市気象予測モデル)をベースとし、日本のどこで災害が発生しても、24時間内に高精細な予報を提供できるよう、従来よりも計算する時間や費用を減らす運用技術となる。同技術は、東京科学大学や筑波大学と共同で開発する。
なお、Kプログラムの運航安全管理技術に関する研究開発構想には、ウェザーニューズとJAXAのほか、NTTデータ、情報通信研究機構(NICT)、筑波大学、東京科学大学、Terra Drone、NEC、メトロウェザーが共同で応募している。研究開発の実施期間は5年。
この研究開発では、災害時や緊急時に中心的に対応する公的機関で運用することを想定し、無人機も含めた指揮運用が可能となる運航安全管理システムを開発。災害・緊急時に想定される運用での有効性を実証する。