東京メトロは3月27日、電車がブレーキをかけたときに発生する回生電力の有効活用に向けて、2025年度から変電所電圧の適正化の取り組みを全線展開すること、ならびに使い切れない回生電力を駅施設などの電力に変換する駅補助電源装置の制御方式の変更などを行うことを発表した。

これまで電車がブレーキをかけた際に発生していた運動エネルギーを電気エネルギーに変換することで発電されていた回生電力は、付近を走行する電車に供給され、電車の使用エネルギーの削減に活用されていたが、付近を走行する電車がいない場合、生み出された回生電力の行き場がなかったという。

今回の変電所電圧の適正化は、電車が走行に使用する電圧(き電電圧)を下げることで、き電電圧が上昇して一定の電圧まで達した場合、車両設備の故障を防ぐことを目的に回生電力の発電量を抑制する回生絞り込みが発生しにくい状況を作ることができる一方で、電車線電圧が一定の電圧よりも降下すると列車の加速性能が低下し、運行ダイヤへの影響が懸念されるといった課題を、変電所・車両が保有するビッグデータを分析・見える化した結果、もっとも回生効率が高いき電電圧を特定することに成功した取り組みを踏まえたもの。

すでに2023年12月から有楽町線飯田橋駅~新木場駅間を対象に実証実験が行われ、当該区間の使用電力量が3%程度削減されたこと、ならびにその成果を踏まえ、2024年4月以降対象を丸ノ内線、東西線、半蔵門線、副都心線に拡大。拡大した路線でも一定の効果が得られたことから、2025年度より、日比谷線、千代田線、南北線にも拡大し、全線で長期的な実証実験を行うこととしたという。

  • 変電所電圧の適正化のイメージ

    変電所電圧の適正化のイメージ (出所:東京メトロ)

また、東京メトロでは現在、回生電力有効活用設備として駅補助電源装置を20台、電力貯蔵装置を4台、電力回生インバーターを3台導入しており、これまでに得たデータの分析結果をフィードバックすることで、最適な整定値への見直しを図ることで、さらなる回生電力の有効活用につなげてきたとする。

  • 回生電力有効活用設備

    回生電力有効活用設備の活用イメージ (出所:東京メトロ)

加えて、駅補助電源装置のさらなる回生電力有効活用の検討として、2024年4月から西船橋駅で実証試験を行ってきた結果、制御方を電車線電圧を検知し制御する方式から、電車線電圧の波形を検知し制御する方式へ変更することで、活用できる回生電力が40%ほど向上できる見通しが立ったとのことで、これを踏まえてすべての駅補助電源装置の判定方式を変更することとしたという。

  • 制御方式の変更により活用できる回生電力が向上することを確認

    制御方式の変更により活用できる回生電力が向上することを確認 (出所:東京メトロ)

なお、東京メトロでは、変電所電圧の適正化の取り組みの全線展開で、CO2換算で年間で約4500トンの削減効果を、駅補助電源装置の制御方式変更により、CO2換算で年間で約370トンの削減効果をそれぞれ見込むとしている。