台TrendForceによると、2024年第4四半期の世界の電気自動車(EV)において、バッテリのエネルギーを電力に変換してトルクと速度を制御する役割を担うトラクションインバータの出荷数は前四半期比26%増の867万台となり、その結果、2024年通年の出荷台数が2721万台となったという。
中国および欧州からの強い需要が主な牽引役となり、バッテリEV(BEV)とプラグインハイブリッド(PHEV)の両方の搭載数が同28%増となったという。この高い伸び率により、Huaweiが初めてトラクションインバータサプライヤの5位にランクインしたという。このほか1位がBYD、2位がデンソー、3位がTesla、4位が中INOVANCE Technologyと、上位5社のうち3社が中国勢となっている。
また、SiCインバータはTeslaと中国の自動車メーカーを中心に採用が進み、第4四半期には普及率が16%に到達。この傾向は、競争の激しいパワー半導体業界の成長を示すものとなるという
ただし、地政学的リスクが依然として課題であるともTrendForceでは指摘している。米国のバイデン前政権は退任前に中国のSiC産業に対する6か月間の調査を開始したが、この動きはトランプ政権下でも継続されると予想されている。この調査は、将来の米中関係を形成するための戦略的なツールとなる可能性が高い。
そうした中、BYDが2024年第3四半期にデンソーを抜いてシェア1位となって以降、第4四半期もトップの座を維持した点に加えて、AITO EVシリーズの売り上げが好調だったHuaweiがサプライヤとしてトップ5入りを果たした点が注目される点で、トップ5サプライヤのうち3社が中国勢となったことで、市場が従来の欧州、米国、日本のサプライヤから中国にシフトしつつあることが示されたと言えるとする。
なお、TrendForceでは、短期的には中国と欧州が引き続きトラクションインバータ市場の成長をリードすると予測している。特にBEVは他のパワートレインタイプよりもトラクションインバータの需要が高く、市場における中国の存在感がさらに強化されるとTrendForceは見ており、米国における電動化よりも石油活用への潜在的なシフトなどといった政策リスクは残るものの、中国のEV市場は勢いを維持すると予想している。また、そうした中国市場における政府の買い替えや海外市場に向けたインセンティブなども進められていることから、2025年の世界のトラクションインバータの出荷に対する年間成長率は14%になると予測されるとしている。