電通デジタルは3月24日、AIを活用したマーケティングソリューションブランドである「∞AI」に関する新発表について、メディア向け発表会を開催した。

発表会には、CAIO(Chief AI Officer:最高AI責任者)兼 執行役員の山本覚氏が登壇し、∞AIブランドにおいてどのような未来を描いているのか、先行導入事例も交えながら新たな発表を行った。

電通デジタルの「∞AI」

電通デジタルは、2022年12月に広告クリエイティブ制作のプロセスをAI活用によって革新する「∞AI Ads」を開発。2023年10月には、そのアップデートを含む新たなソリューションブランドである∞AIを発表した。

  • 「∞AI」のロゴ

    「∞AI」のロゴ

∞AIは、生活者が商品・ブランドを発見し、理解し、ファンになることをサポートする3つのAIアプリケーション「∞AI Ads」「∞AI Chat」「∞AI Contents」と、それらの基盤となるプラットフォーム「∞AI Marketing Hub」で構成されている。

2022年にリリースされた∞AI Adsは、デジタル広告クリエイティブ制作の4つのプロセスである「訴求軸発見」「クリエイティブ生成」「効果予測」「改善サジェスト」において生成AIを活用し、最適化および最大化を行うアプリケーション。

∞AI Chatと∞AI Contentsは2023年にリリースされた。∞AI Chatは、企業の独自データを用いて、ユーザーにパーソナライズした対話型AI開発を支援するアプリケーションで、∞AI Contentsは、電通デジタルがこれまで培ってきたクリエイティビティを活かし、AI活用によるバーチャルヒューマンやオウンドメディア構築など、ユーザーエンゲージメントを高めるサービス・プロダクトを提供するサービスとなっている。

  • 「∞AI」ブランドの全体図

    「∞AI」ブランドの全体図

両サービスは、体験の対話化・リッチ化によるデータ活用の促進を行うサービスとして、さまざまな企業とのコラボレーションを実施している。例えば、∞AI Contentsにおいては、キャラクター活用の事例として集英社と開発した「DEAIBOOKS」で採用されている。

「∞AI」を大型アップデート

このようにさまざまな実績を積んできた∞AIだが、今回、各ソリューションにAIエージェント技術を導入する大型アップデートを発表した。

「企業経営における生成AI活用において、能動的にタスクを考え、必要なシステムやデータにアクセスし、タスクを実行する『AIエージェント』技術が注目されています。特にデジタルマーケティング分野においては、データ分析・企画立案・顧客理解・コンテンツ生成などのプロセスをAIエージェントとの対話を通して実行することで、人間とAIの理想的な協業が加速することが期待されています」(山本氏)

  • ∞AIのアップデート内容を説明する山本氏

    ∞AIのアップデート内容を説明する山本氏

今回のアップデートを通じて、電通デジタルの生成AIを活用したサービス開発力と独自データの活用・分析力を軸に、担当者が各AIエージェントと自然な対話を交わしながら最適な解決策をスピーディーに生み出し、企業のデジタルマーケティング活動の支援において、施策の分析から戦略立案、改善策の実施までPDCAサイクルの高速化を実現する。

具体的には、デジタルマーケティングにおけるデータ分析のエージェント型ソリューションである∞AI Marketing Hub内における4つのソリューションの開発を行った。

それに加えて、デジタル広告の制作プロセスをAIにより効率化・最適化する∞AI Adsにおいては、画像、動画生成、効果予測においてAIエージェント技術を融合したアップデートを行う。具体的には「マルチモーダル生成AIの搭載」や「対話形式でのプランニング・施策実施」を目指す。

「∞AI Marketing Hub」の4つの新ソリューション

∞AI Marketing Hubは、∞AIブランドを支える基盤として、これまで各企業固有のデータの学習やマーケティング活動に活用可能な各種AIモジュール・データアセットを取り込み、企業のマーケティング活動を支援してきている。

今回の発表に基づき、∞AI Marketing Hub内に新たに4つのソリューションを開発することで、データの分析や利活用、その後のデジタルマーケティング施策立案に貢献していくという。

∞AI Customer Data Hub:さまざまなデータを自動で構造化

企業が保有する1stパーティデータやAIチャットで取得した対話や各種調査から得られるデータに加え、電通デジタルの各種マーケティングデータなどを自動的に統合・構造化し、顧客一人一人のカルテをリアルタイムで生成する。データの一元的な閲覧性が向上し、その後のAIによる洞察抽出・施策生成の精度を向上させる。

∞AI Customer Twin:仮想顧客AI生成

∞AI Customer Data Hubに蓄積・統合されたデータを基に、顧客一人ひとりの心理・行動特性を忠実に再現した仮想顧客AI(カスタマーツイン)を生成する。

担当者がAIエージェントを通じ、仮想顧客との対話型インタビューや調査を迅速に実施することで、マーケティング施策の仮説検証や分析、施策の検討・提案を高速に行うことが可能となる。

∞AI MC Planning:マーケティングコミュニケーション施策のプロセスを対話化

∞AI MC Planningは、広告配信におけるメディアプランニング、広告コピーの企画・効果予測などのマーケティングコミュニケーション(MC)施策における一連のプロセスを一気通貫でAIエージェントとの対話形式により実現するもの。

∞AI Customer Data Hubおよび∞AI Customer Twinとのシームレスな連携を通して、顧客一人ひとりの特性を踏まえ、パーソナライズされたメディアコミュニケーションプランをリアルタイムに提示し、企業の迅速なマーケティング意思決定を実現する。

∞AI CX Planning:CX改善のアイデア創出プロセスを対話化

∞AI CX Planningは、顧客体験(CX)の改善を目的とした、カスタマージャーニー設計や対話型AIチャットを活用した新規事業・サービスのアイデア創出、既存事業の高度化などのアイデア創出のプロセスをAIエージェントとの対話形式で実現する。

∞AI Customer Data Hubと∞AI Customer Twinに蓄積された顧客の嗜好、購入履歴、インサイトなどのデータとの連携により、それらを統合的に反映した顧客体験の設計を迅速に実施することができ、革新的な商品・サービス創出の実現を加速する。

今後の展望

電通デジタルは、今後も∞AIを中心としたAI活用によるマーケティング活動の支援体制をさらに強化しながら、dentsu Japanおよび海外の電通グループの各種ソリューションと、AIエージェントを経由してシームレスに連携・統合するエコシステムの実現を目指していきたい考え。

AIエージェントが電通グループ内のさまざまなシステム・サービスとの橋渡し役を果たし、新たなマーケティングプロセスの自動化およびマーケターの業務支援をさらに高度化させることで、企業の事業成長に貢献していくという。まずは、同日から社内での本格運用を開始し、今後、社外への販売なども目指す。