24M Technologies(24Mテクノロジーズ)は、同社が2024年2月よりリチウム金属電極向けに提供してきたリチウムイオン電池(LiB)の充電速度と低温環境での性能を改善できる電解液「Eternalyte(エターナライト)」のシリコン/グラファイト負極向け品を開発したことを発表した。

同社は2010年にマサチューセッツ工科大学(MIT)での研究成果を事業化するためにスピンアウトして誕生したリチウムイオン電池に関する技術メーカー。2012年には2019年より同社のプレジデント兼CEOを務める太田直樹氏がCTOとして入社。現在までに京セラがクレイ型電池と銘打って同社の技術を活用した蓄電池の提供を行っているほか、旭化成、伊藤忠商事、富士フイルムなどの日本メーカーとのパートナーシップや出資を受ける形で共同開発を行うなど、リチウムイオン電池の革新に向けた取り組みを進めてきた。

  • 太田直樹氏

    24Mテクノロジーズの現状ならびに最新技術に関する説明を行った同社プレジデント兼CEOの太田直樹氏

安心・安全なリチウムイオン電池を実現する技術を提供

現在の同社のビジネスモデルは、自分たちでは製造を行わず、リチウムイオン電池の地産地消に向けて、技術をライセンスするほか、そうしたパートナーに材料や装置の提供も行う方向性を指向している。

これまでに提供されている技術プラットフォームとしては大きく4つ。1つ目が正極や負極、活物質などを集電箔と呼ばれる金属箔上に固定するための糊の役割をするバインダーが不要な電極とすることで、電極材料の直接リサイクルを可能とした「LiForever」。2つ目がセル組み立てとパック組み立てを一体化し、直接パック内に直列または並列に封止された正負電極対を組み込むことで、部材の削減を可能とする「ETOP」。3つ目が、絶縁体の表面に導電層を追加したセパレータとすることで、リチウムのデンドライトが生じても、正極から負極に伸びていくデンドライトが導電層にあたると、そこから電子を得られるため、それに沿って横に広がっていくこととなり、縦に伸びることはなく、負極と正極が直接つながる形での内部ショートならびに、それに伴う発火を防ぐことができる「Impervio」である。

  • 24Mテクノロジーズ
  • 24Mテクノロジーズ
  • 24Mテクノロジーズが提供する4つの技術プラットフォームの概要 (提供:24M、以下すべてのスライド同様

  • Impervioの技術概要
  • Impervioの技術概要
  • Impervioの技術概要。正極と負極を分けるセパレータの表面に導電層を形成することで、負極から成長してくるデンドライトがそこに触れた後は正極に直進するのではなく、セパレータに沿って横に成長するため、発火を防ぐことができる。また、電導度の変化などのモニタリングにも利用でき、バッテリー寿命の把握なども可能だという

低温でも性能が落ちない電解液

そして4つ目が「Eternalyte」。従来のリチウムイオンと溶媒の関係性であるリチウムイオンが電解液を伴って移動するのと異なり、詳細は明らかにされていないため、かなり推測が入るが、複数の溶液を組み合わせることでリチウムイオンを内包するようなチャネル構造を規則的に配列させた有機溶媒を実現することで、イオンの伝動パスを系統的に行えるようにし、それにより一般的な電解液における低温での凝固(粘度の低下)に伴うイオンの移動の減少(内部抵抗の増加)による電圧の低下を起こさず、構造間でイオンのやり取りを行うこと(太田氏は「バケツリレーのような形でリチウムイオンが動いていく」と表現している)で、温度環境に関係なく高いイオン伝導を実現した電解液だという。

  • Eternalyteの特長

    Eternalyteの特長

  • Eternalyteの技術イメージ

    Eternalyteの技術イメージ

これまでリチウム金属負極向けには提供されてきたが、今回、新たにシリコン/グラファイト負極向けに最適な材料設計を行う形でラインアップを拡充。その性能としては、25℃で26mS/cm、輸率0.6という高いイオン伝導度を達成したとする。

これにより、例えば1充電あたり480kmの電気自動車(EV)向け電池パックに適用した場合、4分以下で300kmの走行可能な充電量を回復させることができるようになるという。また、-20℃の低温環境下においても、1Cレートで80%以上の容量を保持できるほか、10C充電、1C放電のサイクルで、NMC811(三元系正極材料)/Si10-Gr90(シリコン-グラファイト負極)のセルにて限定容量範囲で630サイクル(12-65% SOC:State Of Charge)以上を実施しても容量の低下が見られなかったという。

  • Eternalyteの試験結果
  • Eternalyteの試験結果
  • Eternalyteの試験結果
  • Eternalyteの試験結果
  • Eternalyteの試験結果
  • Eternalyteの試験結果

一方のリチウム金属負極向けについても高い性能を実現していることから現在、同社ではeVTOL向けにNMC系の半固体正極を活用し、銅とアルミを極力減らすことで、セルエネルギー密度525-550Wh/kgを実現したバッテリーセルを開発。2025年の第2四半期~第3四半期のどこかで、これを搭載したeVTOLによる航空実負荷デモンストレーションを実施する予定としている。

  • eVTOLでのデモを行う予定

    リチウム金属負極向けEternalyteでは、2025年内にもeVTOLでのデモを行う予定としている

  • 新機能を追加したEternalyteを提供

    今後も新機能を追加したEternalyteを提供する予定としている

なお、同社ではサンプルを希望する企業については、相談してもらいたいとしている。