ニコンは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が公募する令和6年度宇宙戦略基金事業において、技術開発テーマ「宇宙輸送機の革新的な軽量・高性能化及びコスト低減技術」の実施機関に採択されたと2月27日に発表。同社が戦略事業と位置づける、金属3D積層を含むデジタルマニュファクチャリングの技術を活用する。

  • 画像提供:JAXA

技術開発の主な目的は、ロケットなどの宇宙輸送機の大型構造体や部品における、熱可塑性複合材の適用拡大を通じた革新に加え、金属3D積層技術の活用拡大により、高品質化と造形プロセスの革新を図るための基盤技術の確立に取り組むこと。

同社では、ロケットエンジンなど大型かつ精密さを重視する宇宙部品の金属3D積層による製造技術を確立し、これらを製造する装置開発の基盤技術も確立することを目標に掲げている。

具体的には、大型金属3D積層造形システムを導入し、造形時のインプロセスモニタリング・シミュレーション技術開発・実験検証を通して装置の特性を把握することにより、 造形プロセスの高度化を追求。

また、銅合金での造形について、造形時のインプロセスモニタリングや造形部品の分析を通してプロセスパラメータが造形品質に与える影響を把握し、粉末仕様・保管・造形パラメータ・再使用といった、銅合金のライフタイムプロセス確立をめざす。

ニコンでは今回の技術開発テーマについて、高度な技術開発が必須であり、将来は幅広いアプリケーションにも適用可能な高い波及効果を与えるために、国内企業、大学からなる研究体制とし、各機関が得意とする技術をリード。「国内初の大型金属3D積層造形システム本体と同システムを活用し、宇宙用途に適用可能な精密部品の低コスト化、リードタイム短縮等の世界市場を勝ち抜く造形技術を開発・実証することをめざす」としている。

宇宙戦略基金は、「輸送」、「衛星」、「探査」の3分野で、スタートアップをはじめとする民間企業や大学などが最大10年間、技術開発に取り組めるようにJAXAが支援する基金。

  • 写真は、同社が2月28日に稼働開始し、報道陣にも公開した「Nikon AM Technology Center Japan」(埼玉・行田市)で展示していたロケットエンジンのサンプル