日本製鉄が開発した、高圧水素用ステンレス鋼「HRX19」や液化水素用ステンレス鋼「HYDLIQUID」などの素材が、水素社会の実現に向けて多彩な企業が一堂に会する業界関係者向け展示会に出展されていた。
同社は、東京ビッグサイトで2月21日まで開催されている「H2&FC EXPO【春】2025〜第23回[国際]水素・燃料電池展〜」において、日鉄ステンレス鋼管、日鉄ケミカル&マテリアル、高田工業所と共同出展。
HRX19やHYDLIQUID(ハイドリキッド)などの素材を中心に、高田工業所が有する溶接技術、日鉄ケミカル&マテリアルが提供する新規多孔質炭素材料を含めて、水素ステーションの建設や高圧水素中での材料検査まで、水素社会の実現に欠かせないソリューションを紹介していた。
「HRX19」は全国の水素ステーションなどで、圧縮機やタンクなどの機器をつなぐ配管といった高い圧力がかかる部位に採用されている素材。高圧水素環境下での耐水素脆性(水素の影響を受けても脆くなりにくい性質)を持ち、かつ溶接施工可能な唯一の材料とアピールしている。
現在使われている「SUS316」というステンレスより強度が高い点や、溶接で継手部分を作れる点も大きな特徴。機械式継手の最大の課題であった水素漏れリスクを排除し、安全性向上も追求した。
現在稼働している約160基の商用水素ステーションのうち、定置式の約6割にHRX19が採用されており、「HRX19を採用する水素ステーションは着実に増えてきている」とのこと。また溶接できることから、配管のねじ切りやナットなどの数も抑えられ、水素ステーション自体をコンパクトに仕上げられるというメリットもある。
HYDLIQUIDは液化水素用の材料として開発された材料。前出のHRX19と同様に、米国機械学会が定めたASME規格に準ずるステンレス鋼「XM-19」の規定範囲内で成分を最適化しており、こちらは極低温靭性(極低温下でのねばり強さ)と耐水素脆性をあわせ持ち、かつ溶接施工もできるのが特徴だという。2025年4月に開所予定の「(仮称)岩谷コスモ水素ステーション有明自動車営業所」に採用予定だ。
高田工業所の展示では、HRX19の溶接技術についてパネルと溶接サンプルを使って説明。水素ステーションの高圧水素環境下で使われる溶接継手の安全性・信頼性を向上させられる溶接施工法を確立し、内圧コントロール工法による溶接部内面(裏なみ)の平滑性や、溶接スケールの付着しない酸化フリーの品質を追求したという。
日本製鉄はこうした素材や技術を活かし、今後も水素社会の実現に必要なインフラ構築に寄与するとしている。