元OpenAIの最高技術責任者(CTO)であるミラ・ムラティ氏が、新たなAIスタートアップ「Thinking Machines Lab」を立ち上げた。同社は、人とAIの協働に重点を置いたAIシステムの開発を目指す。
ムラティ氏は、OpenAIにおいて技術戦略と開発を牽引してきた。OpenAIの初期から在籍し、特にGPTシリーズの発展に大きく貢献。2023年末に、OpenAIの理事会がサム・アルトマンCEOを一時解任した際には暫定CEOに指名された。2024年9月にCTOを退任、同時にOpenAIが営利重視の組織に再編する計画が明らかになった。
Thinking Machines Labの社員数は約30名で、OpenAI出身者を中心に、AI研究・開発の最前線で活躍してきた人材が集結している。CTOには元OpenAIの研究責任者であるバレット・ゾフ氏が就任し、OpenAIの共同創設者の1人であるジョン・シュルマン氏がチーフサイエンティストとして参画している。
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Thinking Machines Labについて「私たちは、ChatGPT、 http://Character.ai 、PyTorch、Mistral など、最も広く使用されているAI 製品とライブラリの背後にいるサイエンティスト、エンジニア、ビルダーです」と紹介
Thinking Machines Labは、単なる自律型AIではなく、人間と協働できる「マルチモーダルAI」の開発を掲げる。マルチモーダルとは、テキスト・画像・音声など複数のデータ形式を統合して処理できる技術を指す。同社のブログ投稿によれば、現在のAIシステムはプログラミングや数学の分野では優れた性能を発揮するが、より幅広い専門分野に適応するには課題が残る。
現在、最先端のAIシステムのトレーニング方法や仕組みは一部のトップ研究機関に限られており、一般のユーザーや開発者が理解し、活用するのが難しい状況にある。これに対し、同社は「AIシステムをより理解しやすく、カスタマイズ可能で、汎用性の高いものにする」と述べている。
具体的には、技術ブログや論文の公開、コードやデータセットの共有を積極的に行い、研究者や開発者がAIをより深く理解できる環境を整備する方針である。
大きな特徴として、研究と実用製品の開発を並行して進めることを重視している。「優れた研究が実用的な製品開発を支え、また製品開発が研究の方向性を現実のニーズに適応させる」との考えから、開発した技術を実際のプロダクトに組み込むことで、実験的な研究では見えにくい課題を発見し、改良を重ねる戦略を取る。このアプローチにより、「真に価値のあるAIシステムの創出」を目指す。
また、AIの安全性をThinking Machines Labの重要なテーマの一つとして位置付けている。安全なAIシステムの開発と普及のために、以下の3つの方針を掲げている。
- 高い安全基準の維持 - AIモデルの誤用を防ぎつつ、ユーザーの自由な活用を最大限に尊重する。
- 業界とのベストプラクティス共有 - 安全なAI開発のための指針や技術を公開し、他の企業や研究者と協力する。
- 外部の研究支援 - AIの安全性に関する研究のために、コードやデータセット、モデル仕様を共有する。