TrendForceによると、NANDフラッシュメモリ市場は2025年第1四半期も供給過剰による価格は下落傾向が続くが、2025年後半には需給バランスが改善することが予想されるという。

  • 2025年各四半期におけるNAND販売価格の前四半期比増減率予測

    2025年各四半期におけるNAND販売価格の前四半期比増減率予測 (出所:TrendForce)

需給バランスの改善に向けた背景としてはNANDサプライヤ各社が積極的に減産を進めていることに加え、スマートフォン(スマホ)分野での在庫削減、AI分野における需要の高まりなどが挙げられ、そうした要素が絡むことで2025年後半には供給過剰が緩和され、価格の回復が進むことが期待できるとしている。

TrendForceによると、NANDサプライヤ各社はNANDの年間需要成長率が下方修正されたことを受けて、過剰供給の影響を認識しており、実際に2025年に入ってから各社ともに生産削減施策を打ち出してきたとする。

また、中国政府が打ち出したスマホの下取りに対する補助金政策がスマホの販売を刺激し、NANDの在庫削減に寄与していると指摘しているほか、AI分野でも、NVIDIAが2025年後半より最新世代となるBlackwellを搭載した製品の出荷を増やすことが期待されており、併せてエンタープライズSSDの需要が増加することも予想されるとする。さらに、AIサーバの導入コスト削減につながると期待されるDeepSeekのような新興技術の進歩が、中小企業におけるAIの活用を促す可能性があり、30TBを超すSSDが、そうした中小企業にとっての好ましいストレージソリューションになることが予測され、エンタープライズSSDの需要の後押しとなることが期待されるとしている。

加えて、NVIDIAが2025年1月に開催されたCES 2025にて発表した4TB SSDを搭載した小型AIスーパーコンピュータ(スパコン)ともいえる「Project DIGITS」は、パーソナルコンピューティングにおけるAIの導入を加速し、より大容量のクライアントPC SSDの需要を高めることにつながることが期待されるとみられ、そうした高性能なAI搭載PCやワークステーションの登場により、日常的なアプリケーションに対するAIの活用が促進され、クライアントPC SSDの容量拡大が促進される可能性があるともする。

キオクシアもNANDの生産調整へ

日本のNANDサプライヤであるキオクシアが発表した2024年4~12月期の9か月累計業績は前年同期比で増収増益となり過去最高を更新した。AIサーバの強い需要および従来サーバの買い替え需要が成長をけん引した形だが、2025年1~3月期の連結純利益については、2024年10~12月期の763億円から20億~160億円と落ち込む見通しを示しているほか、売上高も前四半期の4500億円から3150~3450億円に落ち込む見込みであり、需要変動に応じた生産調整を進めているとしている。

  • キオクシアの2024年度第4四半期(2025年1~3月期)および通期の業績ガイダンス

    キオクシアの2024年度第4四半期(2025年1~3月期)および通期の業績ガイダンス (出所:キオクシア)

なお同社の見通しでは、2025年前半は顧客の在庫調整が継続し、売価へのプレッシャーが高まると見ているが、年後半には、顧客の在庫調整も終了し、スマホの次期モデルの発売、Windows 10のサポート終了やAI搭載PCの普及による買い替え需要に加え、現在も堅調なエンタープライズ分野の需要の高まりにより、価格面も需給バランスに応じて変動するとの考えを示し、秋口以降に増産に転じることを示唆している。