NECは2月17日、環境経営に関するオンライン説明会を開催した。説明会には、NEC 執行役 Corporate EVP 兼 CSCOの田熊範孝氏が登壇し、NECの環境に対する取り組みを中心としたビジネスの展開について説明した。

  • NEC 執行役 Corporate EVP 兼 CSCOの田熊範孝氏

    NEC 執行役 Corporate EVP 兼 CSCOの田熊範孝氏

「2040年までにCO2排出量を実質ゼロ」を目指す

田熊氏は最初に、世界経済フォーラムの調査において環境リスクは企業の経営に大きな影響をもたらすと報告されていることを挙げ、「環境問題には偏在性や不平等があり、因果関係を論理的・定量的に示すことは難しく、対策を困難にしている。そのためICTを活用した見える化と対策が重要」と説明した。

このような考えのもと、NECは1970年に環境の専門組織を立ち上げ、自社事業の環境対策を開始している。海底から宇宙まで、世界のあらゆる場所でICTを活用した価値提供している同社だが、環境問題においても見える化・対策に貢献しているという。

具体的には、人工衛星を活用した環境対策への貢献として観測センサー「TANSO」によるCO2の見える化、地球観測衛星「だいち」によるアマゾンの違法伐採防止を行っているほか、人々の暮らしを守る防災ソリューションを開発し、自然災害の見える化・住民への周知や自治体の対策へ貢献している。

  • NECの環境問題に関する取り組み

    NECの環境問題に関する取り組み

また同社は、カーボンニュートラルに向けた目標として、「2040年までにCO2排出量を実質ゼロにすること」を掲げている。この目標に向けて、同社ではサプライチェーンにおけるCO2排出量を示す基準である「Scope1「Scope2」の達成へ向けた再エネの拡大を行っており、「2025年度までに設置可能な全ての屋根に太陽光発電を設置」「2024年度より工場での100%再エネ化スタート」「2022年度より本社ビルとNEC Cloud IaaSデータセンターで再生可能エネルギーを100%活用」に取り組んでいる。

Scope3の達成に向けてはサプライヤーエンゲージメントを推進しており、2024年度中に3社のサプライヤーがSBT認定を取得予定であるほか、三井住友銀行とサプライチェーン全体でのCO2削減支援で協業中であるという。

  • NECグループの2040年カーボンニュートラル目標

    NECグループの2040年カーボンニュートラル目標

加えて、独自空調技術や100%再生可能エネルギーを活用し、環境に配慮したグリーンなデータセンターとして、NEC神奈川データセンター(二期棟)とNEC神戸データセンター(三期棟)を展開している。

100%再エネを活用したデータセンターの実現のため、希望する顧客には、使用した電力に応じて非化石価値を提供してScope3削減を支援しているほか、DX(デジタルトランスフォーメーション)やAI活用のための高性能サーバ環境にて、直接液冷方式で効率的な冷却を実現している。

デジタル化によるアナログで属人的な対応からの脱却が鍵

生成AIの普及拡大に伴い、消費電力の増加が懸念される中、自社開発の生成AI「cotomi」の性能を最大限に引き出し、GPUの演算効率を高める技術を開発したことも環境問題に対する取り組みの1つ。

生成AI使用時の消費電力を削減し、AI需要の高まりに伴うGPU不足や電力問題を改善することで、顧客のScope3削減に貢献している。

さらに田熊氏は、環境領域における経営課題と目指す姿として「デジタル化によるアナログで属人的な対応からの脱却が鍵」と述べた上で、課題や効果の見える化で業務変革を推進し、データドリブンで財務・非財務が統合された経営を実現することが重要であることを説明した。

規制や炭素税などの導入により、環境領域における顧客の課題は「情報開示支援」「最適化・削減 ソリューションデータ基盤」「新規事業の共創」など複雑化している一方で、環境に関する課題はより経営に直結したものとなっているため、「それぞれのステージでNECにとっての事業機会がある」という。

  • NECの事業機会

    NECの事業機会

NECは引き続き、自社をゼロ番目のクライアントとして最先端のテクノロジーを実践する「クライアントゼロ」の考え方や共創によって、DXによる課題解決を実践し、ノウハウ・技術を蓄積することで、顧客のニーズや市場の変化に応じた価値提供ができるパートナーを目指していくという。