NTTは、人がジャンプする複雑な動きや、ボールが跳ねる単純な動きを脳で知覚したときの「自然な見え方」にギャップがあることを世界で初めて発見したと2月17日に発表。
人間の身体動作の印象判断のメカニズム解明を前進させるほか、メタバース空間や映像表現におけるキャラクタの動きのリアリティ向上に必要な要素を解明することにもつながるという。この研究成果は、生物学を対象とする分野横断的な論文誌「Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences」に掲載されている。
映画やゲームのCGなどで作成された人物の全身の動きからは、時にある種の不自然さを感じることがある。人間は視覚情報から外界物体の動きを予測し、その予測が実際の動きと合致するかが、物体の“動きの自然さ”を知覚するカギとなっているためだ。
知覚心理学における従来の研究では、人間は地球の重力下にある物体の運動を、通常と異なる条件下(弱い重力環境)であっても「自然である」と知覚してしまうことがあり、たとえばボールのような単純な物体が地面から跳ね返るときは、地球重力よりも小さい重力下での動きを再現するほうが自然に感じられることが知られていた。
それに対して今回の研究では、上下運動や“リッチな動き”を含む、情報の多い「人間のジャンプ動作」に着目。情報量が多い分、正確な物理モデルに従うのではないか? という仮説を立てて、実際の人間によるジャンプ動作をさまざまに変調した動画を被験者に見せて自然さを評価してもらう心理物理実験と、脳内での重力の法則を用いた計算モデルによる解析を行った。
実験動画は、カーネギーメロン大学のモーションデータベースで公開されているデータを使い、ジャンプ動作の「高さ」と「時間長」を独立して変調した81種類のものを作成。それらをオンライン開催した実験の参加者に見せ、ジャンプの自然さを評価してもらい、評価傾向の結果を調べた。