リコーと東芝テックの合弁会社であるETRIA(エトリア)は2月13日、3社目として沖電気工業(以下、OKI)が参画することを発表し、記者会見を開いた。

リコー、ETRIA、およびOKIは今年10月1日を効力発生日(予定)として、OKIが会社分割により複合機などの開発と生産に関する事業をETRIAに統合するための諸条件を定めた事業統合契約を締結した。また、事業統合後のETRIAの運営に関する株主間契約をリコー、東芝テック、OKIの3社で締結。出資比率はそれぞれリコー80.74%、東芝テック14.25%、OKI5.01%となる。東芝テックの出資比率は15%から14.25%となり、ETRIAは東芝テックの持分法適用会社から外れる。

  • 記者会見の様子

    左から、OKI 代表取締役社長執行役員 森孝廣氏、ETRIA 代表取締役 社長執行役員 中田克典氏、リコー CEO 大山晃氏

ETRIA立ち上げの狙いと事業の進捗

ETRIAはリコーと東芝テックを中心に、これまで日本企業が牽引してきたプリンティング業界で志を同じくする各社の開発と生産体制を統合し、商品の企画および開発から、原材料や部品などの調達、生産の最適化を目指す。

ハイブリッドワークやDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進など、働く環境が大きく変化する中で、ETRIAは同社に参加する企業の強みを集結することで環境変化への対応力を強化するとともに、各社の技術によるブランド差別化を同時に実現するモデルを構築している。

リコーは注力領域として、IT環境の構築、業務プロセスのデジタル化・自動化、効率的なコミュニケーション環境の構築を挙げている。これを支えるのが、同社が提供する複合機をはじめとするデバイスによって培った顧客基盤だ。

リコーCEOの大山晃氏は「ETRIAが生み出す競争力の高いデバイスは、当社の顧客基盤をさらに強く築き上げるとともに、リアルとデジタルをつなぐ接点として当社のITサービスには欠かせない。3社が協力することで、さらに競争力のあるデバイスを生み出していきたい」と、ETRIAにOKIが加わる意義について説明した。

  • リコー CEO 大山晃氏

    リコー CEO 大山晃氏

ETRIAの設立と事業開始からおよそ7カ月が経過した。リコーと東芝テックの統合によるオペレーションは円滑に走り出しているそうだ。事業運営の主なインフラを統合し、当初の計画通りに商流、価格、原価のコントロールを開始している。

複合機のエンジン開発は主に3つのフェーズで進行中だ。まずは2社が開発した既存モデルを相互に活用する。次に、エンジンプラットフォームを集約し共通化、より性能が高いセグメントの取捨選択を進める。その後に、新規の共通エンジン開発に着手する。現在は既存モデルを相互に活用すると同時に、その後のフェーズに人員をシフトしている段階とのことだ。

ETRIA社長の中田克典氏は「人材と企業文化の融合も進んでおり、約1万1000人の背景の異なる社員が、新しい価値創造に向けて活躍している。特に日本本社では、すでに何年も一緒に仕事をしているような雰囲気が見られる」と、ETRIAの現状について報告した。

  • ETRIA 代表取締役 社長執行役員 中田克典氏

    ETRIA 代表取締役 社長執行役員 中田克典氏

OKIの参画によりETRIAは開発力を強化

ETRIAはプリンティングにおける共通エンジンの開発と生産を担う。エンジンを共通化することでスケールメリットを確保しつつ、コントローラーは各社が独自に開発して搭載するためブランド差別化も実現できる。3社はそれぞれの特色を搭載した複合機を従来通りの顧客接点で提供を拡大する。

  • ETRIAの事業モデル

    ETRIAの事業モデル

OKIはETRIAに参画することで、独自性の高い技術革新と商品開発力の強化で貢献するという。また、レジリエントな生産体制の構築、エンジンのシェア拡大にも寄与するとしている。一方でETRIAに期待する点として、同社が持つプリンタの技術と人材の活用、商品ラインの強化と販売の活性化、将来的なさらなる共創への発展を掲げている。

  • OKIの期待と貢献するポイント

    OKIの期待と貢献するポイント

OKIの代表取締役社長執行役員である森孝廣氏は「今回の参画においては、各社が互いにWin-Winの関係を築けている。私もプリンタ業界に長年身を置いているが、今回のアライアンスは私自身が心から望んでいたこと。リコーと東芝テックは以前から一緒にビジネスを進めてきた仲間であり、人や企業カルチャーの問題はまったく心配していない。まさにベストパートナーだと考えている」と期待の表情を見せた。

  • OKI 代表取締役社長執行役員 森孝廣氏

    OKI 代表取締役社長執行役員 森孝廣氏

また、東芝テック 代表取締役社長の錦織弘信氏は「OKIとリコーと当社は価値あるサービスの提供を通じてお客様や社会の課題解決をしたいという点で共通の考えを持っている。OKIの豊富な経験や技術が加わることでETRIAの基盤はより強固なものになり、日本のものづくりをより元気に、そして3社のシナジーを掛け合わせた競争力の高い製品を通じて社会課題の解決に貢献できると確信している」と、メッセージを寄せた。

  • 今後のETRIAの展開

    今後のETRIAの展開