市場調査会社であるTrendForceによると、生成AIアプリ「DeepSeek-V3/R1」の登場は、ユーザーのAIインフラストラクチャへの投資をより厳密に評価させ、GPUなどのハードウェア依存を減らし、より効率的なソフトウェアコンピューティングモデルの採用に向かうなど、業界全体に変化をもたらす可能性があり、その結果、2025年以降、GPUに対する需要が変化する可能性があるという。
AIサーバ市場は2023年以降、大手クラウドサービスプロバイダ(CSP)を中心に、AI学習向けに投資が続いており、2025年までにサーバ全体の15%以上を占め、2028年には20%に近づくと予想されている。
一方、2025年以降の焦点はエッジAIによる推論へと移行するともみられ、多くの企業がNVIDIA BlackwellなどのGPUを採用しつつ、AWSのような独自ASICの開発を加速させることで、特殊なAIアプリニーズを満たすことを目指す動きを見せるともする。
また、DeepSeekなどの中国のCSPやAI企業は、米国の半導体輸出規制に対し、より効率的なAI半導体とアルゴリズムの開発を推進し、多様なAIアプリの提供を進めようとしている。これはこれまでのAI業界のモデルのスケーリングとデータ量の増加、GPU性能の強化による成長からの戦略転換に向かう可能性を示すもので、特にDeepSeekは、AIモデルの蒸留を利用して、ハードウェアへの依存を減らしたとされ、V3に至っては2048個のNVIDIA H800 GPUで実現したとするなど、ハードウェアの選択、蒸留技術、オープンAPI戦略から生み出されたアプローチは、技術革新と商業的実現可能性のバランスを保ちながら、AIの効率性向上への取り組みを強化するものとなる可能性があるとする。
中国のAI市場は2方向に発展か?
TrendForceは、米国の半導体輸出規制が継続することを踏まえ、中国のAI市場が2つの方向に分かれていくと予測している。1つはAI関連企業の中国内のAI半導体とサプライチェーンへの投資加速。今後、米国が規制強化に動く可能性があるため、中国勢は独自のAI半導体とHBMの開発を進めざるを得なくなる見込みであり、現在、入手可能なNVIDIA H20の調達を継続するとともに、独自ASICの開発強化が進むと考えられる。もう1つは、中国の既存インターネットインフラを活用して、ソフトベースのソリューションでハードウェアの制約を補おうというもので、DeepSeekがこうしたアプローチの実証役となったといえる。
HuaweiがAI推論用半導体「Ascend 910C」の量産を3月に開始か?
中国政府が支援する国家集積回路産業投資基金(ビッグファンド)は、国内半導体産業の強化として470億ドル規模の投資をAI半導体やHBMも含めて進めている模様である。
英Financial Timesや台湾の経済日報によると、HuaweiはAI推論向けに自社開発の半導体で市場シェアを狙っているという。3月末にも量産開始見通しとされる最新モデル「Ascend 910C」は、NIDIA H100に匹敵する性能を持つとも報じられている。
なお、中国では多数のスタートアップが独自AI半導体を開発中であるとされるが、中国の業界関係者からは、こうしたAI半導体の多くは供給不足に伴い入手が制限されるとの見方がでている。SMICを中心とする中国ファウンドリは輸出規制により最新の製造装置を入手できないため、生産能力を拡充できないためだという。