2月1日から中国に対する10%の追加関税、メキシコとカナダへの関税25%が実行に移される中、トランプ大統領は3か国への関税とは別に、石油や鉄鋼などとともに半導体も関税の対象とする可能性を示唆した。半導体に対する関税について、トランプ大統領は対象国や税率には触れなかったが、2月18日ごろに実施されるだろうと言及している。

トランプ大統領は昨年の選挙戦の最中から、中国製品に対する一律60%の関税、諸外国からの輸入品に10%から20%の関税などを公約のように支持者たちへ強く訴えてきたことから、具体的な関税率が変わったとしても、それを実行することは間違いなかった。関税発動で消極的な立場を示せば、支持者たちのトランプ離れが進むだけでなく、来年の中間選挙も危うくなってくる恐れがあることから、積極的な関税発動は至上命題と言えよう。

では、半導体への関税導入は何が目的なのか?。トランプ大統領の半導体に対する関税政策は、米国の製造業復興と経済の自立を目指すものであり、国内での雇用創出と国家安全保障の強化にもつながる重要な政策と考えている。

半導体、特に先端半導体は軍事技術やAI開発に欠かせず、海外依存を減らすことで安全保障面での自主性を確保する狙いがある。トランプ大統領は、これによって長期的には米国の半導体製造能力を強化することを目指しており、関税は外国企業に国内での製造を促す強力な動機付けとなる。しかし、初期投資やインフラ整備にかかる高額な費用を考えると、即効性があるわけではなく、この政策が半導体市場に及ぼす短期的な影響は明白であろう。関税により半導体の価格が上昇し、消費者製品や企業のITインフラストラクチャのコストが増加する可能性が高い。これは、特に米国の消費者には直接的な負担増となり、企業が新たな製造拠点や調達先を探す必要から、サプライチェーンが今後混乱する恐れが考えられよう。

こういった政策を躊躇するなく進めるトランプ大統領の本音はどこにあるのだろうか。トランプ大統領は、米国が諸外国に対して政治経済的に圧倒的な優位性を保ち、世界で最も強い国家であることに執着心がある。先端半導体など最新テクノロジーに世界の注目が集まり、台湾が先端半導体分野で世界を圧巻することは、MAGA(米国を再び偉大な国家にする)を追求するトランプ大統領にとっては本末転倒なことである。トランプ大統領は先端テクノロジー分野でも米国の復権を強く掲げており、半導体分野での関税導入はその一環と捉えられ、選挙戦の最中から、「台湾は半導体市場を米国から奪った。金を払うべきだ」などと発言したことはその証だろう。今後、半導体分野をめぐって米国と台湾との間では亀裂が生じていくことが懸念される。