東京科学大学(Science Tokyo、科学大)と東京応化工業は1月29日、UVナノインプリント(UV-NIL)を用いたシリコンフォトニクスプロセスを開発したことを発表した。
同成果は、同大工学院 電気電子系の永松周 学士課程学生、同 雨宮智宏 准教授、同 西山伸彦 教授、東京応化の森莉紗子氏、藤井恭氏、浅井隆宏氏、塩田大氏、産業技術総合研究所 プラットフォームフォトニクス研究センターの渥美裕樹氏らによるもの。詳細は2025年1月25~30日(米国時間)に米国サンフランシスコで開催されている「SPIE Photonics West 2025」にて報告された。
ナノインプリントは、ハンコを押すように、テンプレートを基板に押し当てて、微細加工を実現する技術でナノインプリントリソグラフィ(NIL)とも呼ばれる。2014年にキヤノンが世界トップレベルのNIL技術を有していたMolecular Imprints(MII)を買収。以降、技術開発を進め、2023年に半導体製造向け次世代リソグラフィ技術として商用化にこぎつけ、2024年にはその初号機となる半導体製造装置「FPA-1200NZ2C」を米国テキサス州にある半導体コンソーシアム「Texas Institute for Electronics(TIE)」に出荷したことを発表するなど、半導体分野でも適用可能だと注目を集めるようになってきているほか、先行してメタマテリアルやメタサーフェスなどのウェハ光学素子の実現にも活用されている。
2024年12月に開催されたSEMICON Japan 2024のキヤノンブースでもNILを用いて製造された300mmウェハベースの計算機合成ホログラム(Computer-Generated Hologram:CGH)やメタレンズが展示されていた (編集部撮影)
こうした微細加工技術の応用先の1つとして、ウェハ上に大規模な光回路を構築する集積フォトニクス分野が考えられており、中でも特に高い解像度が必要とされる、分布帰還型(DFB)レーザーにおける回折格子の形成、光回路の入出力に使用するグレーティングカプラの形成、シリコンフォトニクス光回路における導波路の形成などへの適用が期待されている。そこで今回、研究グループでは、近年、技術開発が急速に進むシリコンフォトニクスに対して、紫外光(UV)でポリマー樹脂を硬化させるNIL(UV-NIL)を導入するプロセスを開発することに挑んだという。
具体的には科学大内に設立された東京応化工業未来創造協働研究拠点にて、EVグループのUV-NILフォトリソグラフィシステム「EVG620 NT」を活用する形で、シリコンフォトニクスプロセスに合わせたNIL用光硬化性樹脂の開発を行うとともに、EV Group(EVG)が開発した透明なフレキシブルポリマーのワーキングスタンプを使用して、ウェハレベルでUVナノインプリントを行う「SmartNIL技術」に基づくロールオンプロセスの最適化を行ったという。
この結果、開発されたシリコンフォトニクスプロセスに適した光硬化性樹脂は、UV-NILの標準仕様に加えて、シリコンフォトニクスプロセスに必須であるシリコン導波路構造を形成するためにのSF6-C4F8混合ガスによる擬似的なボッシュプロセスによる変質性を抑えたエッチング耐性が確認されたほか、O2プラズマアッシングによる除去性、ワーキングスタンプ剤である「EVG NIL UV/AS5」との適切な離型が可能な親和性が確認されたという。