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米国バイデン政権が1月13日付けで「人工知能(AI)の時代における米国の安全保障と経済力の確保」と題するファクトシートを発表したのと併せて米国商務省産業安全保障局(BIS)も同日、「AI向け半導体などへの輸出管理を強化する暫定最終規則(IFR)」を発表した。

今回の規則についてBISは、悪意のある行為者(中国、北朝鮮、ロシアなど22か国が対象)に先端AIモデルが渡ることを防ぐのと同時に、安全で責任ある外国の事業体(オーストラリア、ベルギー、カナダ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、日本、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、韓国、スペイン、スウェーデン、台湾、英国の18カ国・地域)が米国の最先端AIモデルにアクセスできることが目的だと説明している。

これ以外の国々については年間1700基まで許認可不要の数量制限を設け、輸出される半導体の数量や輸出先を把握する仕組みを整えることで、中国などに輸出され軍事転用されるリスクを防ぐ狙いがあるというが、この輸出規制に対し、米国の業界団体や当事者となるNVIDIAなどからは「誤った政策」と非難する声明が相次いで出されている。

「深く失望」と表現したSIA

SIAは、今回の措置に対して「深く失望」と表現する声明を会長兼CEOのジョン・ニューファー氏の名前で発表。新たな規則に対し、戦略的市場を(海外の)競合他社に譲り渡すことで、米国経済と半導体およびAIの世界的競争力に予期せぬ永続的なダメージを与える恐れがあること、リスクが大きく発表のタイミングも適当ではないことを指摘。SIAは政府と協力し、国家安全保障を守りながら、米国の競争力確保と勝利に向けた道筋を描く準備をしていることを説明しているが、SIAが、このような政権批判の声明を発表するのは異例ともいえる。

ITIは「深刻な懸念」を表明

世界有数の技術推進団体であるITIも、会長兼CEOのジェイソン・オックスマン氏の名前で、「深刻な懸念を抱く」と表現する声明を発表。今回の規則が、世界のサプライチェーンを分断し、米国技術の使用を妨げる恐れがあること、利害関係者の積極的な関与なしに、重大かつ複雑な規則の完成を急ぐことは、米国の競争力と世界的な同盟への影響をほとんど考慮していないと指摘。次期トランプ政権に規則の撤回と業界との連携による、国家安全保障上の懸念対処のための効果的な政策を共同で策定するよう求めるとしている。

NVIDIAは経済の成長阻害と非難

この規制の当事者の1社となるNVIDIAも、今回の規制に対し、政府関係担当副社長であるネッド・フィンクル氏が同社のブログにて、「前例のない誤った規則」と指摘。アメリカのリーダーシップの弱体化につながり、世界のイノベーションと経済成長を阻害する恐れがあることに加え、米国が苦労して獲得した技術的優位性を失う可能性があるとしているほか、米国の安全保障強化には効果がないともしている。

中国政府は断固反対の声明を発表

中国政府商務部(日本の経済産業省に相当)の広報官は1月13日の記者会見で、今回の措置に触れる形で「バイデン政権のAI関連の輸出規制措置は、第三者と中国との間の通常貿易を妨害することになる」と指摘。国際的な多国間経済と貿易に対するあからさまな侵害の一例であり、断固反対するとし、自国の正当な権利と利益を断固として守るために必要な措置を講じるとしている。