Keysight Technologiesの日本法人であるキーサイト・テクノロジーズは、複雑な量子回路の開発を高速化する回路設計環境「量子回路シミュレーション(Quantum Ckt Sim)」を発表した。

同環境はGoogle Quantum AIと連携し、超伝導量子回路分野で正確なモデル化が重要とされる磁束の量子化を組み込んだソリューション。基本的な特性により、超伝導ループを通る磁束は離散的な単位で量子化されることが保証され、量子回路の動作にとって重要な側面になることから、Google Quantum AIとキーサイトは、周波数領域の磁束量子化を回路ソルバーに統合することで、この課題に対処したとする

。この結果、磁束量子化を正確にモデル化することが可能となり、研究者はより信頼性が高く効率的な超伝導回路を設計することができるようになったとのことで、成果は技術論文「Modeling flux-quantizing Josephson junction circuits in Keysight ADS」としてまとめられ、磁束量子化の革新的なアプローチと、量子コンピューティング分野に与えるその影響についての説明が行われているという。

キーサイトでは、同環境は、周波数領域における高度な磁束量子化により、量子ワークフローを合理化し、大規模で非線形性の高い量子回路の解析において高い精度と機能を提供することで、研究者は複雑な量子回路をより高い精度でモデル化し、計算誤差を低減してシミュレーション全体の信頼性を向上することができるようになると説明している。

なお、同環境を活用した設計およびシミュレーションソリューションの主な特徴は以下の通りとなる。

  • 量子デバイスライブラリ:Keysight ADSの量子デバイスライブラリとしてRF/DC SQUID、SNAIL、FLUXONIUM、SNAKEなど、頻繁に使用されるデバイスを含む
  • 包括的な設計環境:ハーモニックバランス、時間領域の過渡現象/畳み込み、変調領域の回路エンベロープ、xパラメータ非線形モデルジェネレータなど、さまざまな非線形回路シミュレータを備えている
  • 量子制御の強化:外部磁束による超伝導回路の駆動を可能にし、先進的な量子コンピューティングアプリケーションにおける、量子回路のより精密な制御と操作が可能
  • 設計の合理化:量子システムの出力チェーンの重要なブロックであり、読み取りの忠実度を向上させる量子アンプを含むパラメトリック量子回路の設計を簡素化
  • Quantum Ckt Sim

    Quantum Ckt Simは、パラメトリック量子回路のシームレスな設計を可能にする周波数領域の磁束量子化を備えた回路環境だという (提供:キーサイト)