中国政府の国家市場監督管理総局(SAMR)は、NVIDIAに対する独占禁止法(独禁法)違反調査を開始したと台湾や香港のメディアが報じている。
SAMRは、NVIDIAのどの慣行が独占的であるとみなされるかを明らかにしていないため、今回の措置が中国の半導体産業に対する米国政府の規制に対する対抗措置ではないかとの憶測が広がっている。NVIDIAは、営業場所にかかわらず規則を遵守しており、当局の調査に協力するとしている。
独禁法違反が確認された場合、NVIDIAは多額の罰金を科せられる可能性がある。中国の独禁法では、企業の年間収益の最大10%の罰金を科すことが認められているという。NVIDIAの2023年の中国での売り上げは103億1000万ドルほどであるため、その場合、最大10億3000万ドルと試算されるが、一部からは深刻なケースでは、罰金は2倍または5倍となり、最大50億1500万ドルとなる可能性もあるとの指摘もある。香港メディアによると、NVIDIAの香港を含む中国の売り上げは、115億7000万ドルで同社の売上高の12.7%占めるという。
米国政府がNVIDIAにGPUの輸出動向の調査を要請
一方の米国商務省も、中国へ輸出が事実上禁止されているNVIDIAのハイエンドGPUが中国で使用されている事実を鑑み、同社の半導体製品がディストリビュータを通して中国にどのように渡ったのかを調査するよう同社に依頼したと米国メディアが報じている。
米国政府は、NVIDIAの最新世代のGPUがアジアの第3国を経由して不正に中国に輸出されていることを疑っているようで、NVIDIAは、SuperMicroやDell Technologiesなどの大手ディストリビュータに、GPU搭載サーバ製品の販売先である東南アジアの顧客による中国への転売調査を依頼した模様である。
また、Reutersも引用しているThe Informationの報道によると、NVIDIA製GPUの不正輸出に関与した5人の異なる人物が、SuperMicroによる調査で、これまで発見を回避してきたことを述べたという。
NVIDIAは、顧客とパートナーにすべての輸出規制を厳守するよう求めており、グレーマーケットでの転売を含め、製品の不正な逸脱した利用は、NVIDIAの利益にならないと述べたという。密輸業者がサーバのOSのシリアル番号を変更したケースもあったことが判明しているという。
Dellによると、同社はディストリビュータと再販業者に適用されるすべての輸出規制に従うよう義務付けているという。また、SuperMicroは、輸出管理規則に基づくライセンスを必要とする地域や団体へのGPUシステムの販売および輸出について、米国の輸出管理要件をすべて遵守しているという。
なお、バイデン政権は2023年、ハイエンドAIチップの中国への販売禁止を拡大したほか、最近も中国への半導体チップの輸出取り締まりを強化させているが、そうした中にあっても複数の中国の大学や研究機関が再販業者を通じて中国への輸出が禁止されている最新AIチップを調達したことが判明している。