エレファンテックは12月17日、インクジェット印刷技術を活用することで銅の使用量を70~80%を削減できる基板技術「SustainaCircuits」の汎用多層基板への適用に成功したことを発表した。

もともと同社は片面フレキシブル基板に同技術を適用していたが、汎用多層基板への適用はいくつかの技術課題を解決する必要があり、2027年以降の実用化を計画していたという。

  • 開発した汎用多層基板の写真
  • 開発した汎用多層基板の写真
  • 今回開発された4層貫通基板 (出所:エレファンテック、以下すべて同様)

今回の取り組みではリジッド基材への対応として、多くの硬質基材と密着するプライマーと銅ナノ粒子インクを新たに開発。これらの材料が、ガラスエポキシ多層基板材料(FR-4)に対して強い密着性を発揮することを確認したほか、高温環境下の150℃240時間の試験後であっても自社による測定ながら1.0N/mm以上の密着性を実現していることも確認したとのことで、リジッド基材として活用可能な水準に到達できたとする。

また、プライマーの改良にビア内にインクを塗布する技術を加えることで、多層化ならびにビアの形成にも対応したという。この製法では、ビアと配線を同時に形成することで工程を減らすことができるほか、材料や設備も削減することができるようになるともしているが、今回開発された材料ならびにプロセスは硬質基板向けのものであり、フィルム基板の多層化には現状では適用できていないともする。

  • 2層基板と4層基板の製造プロセス

    2層基板と4層基板の製造プロセス

さらに、プライマーとインクの組み合わせの改良に加えて、印刷機の精度改良により、L/S=50/50μmでの配線形成が可能になったほか、高い密着性に加え、めっき耐性も持たせたことで、電解めっきによる100μm級の銅膜厚の基板製造も可能になったとのことで、必要な部分にだけ銅を成長させることで、パターン形状にも依存するが、典型的には70%程度の銅使用量の削減が可能になるという。

  • 100μm超の厚みを持つ配線

    100μmを超す厚みを持つ配線を形成した様子

なお、今回開発された技術はテストサンプルの製作ならびに主要な評価項目をクリアした段階とのことで、今後、2025年前半より試作提供を開始し、量産体制の構築を進めていく予定としているほか、従来の汎用多層基板製造工場に、同社の印刷装置を導入する形で既存設備と組み合わせての量産適用も可能なため、パートナーへの装置や材料の提供も含めた形で供給体制の構築を図っていくとしている。

  • 今回開発された技術の想定対応範囲

    今回開発された技術の想定対応範囲