川崎重工は、認知症の人と会話できる「ソーシャルロボット」の社会実装に向け、本格的な開発に着手すると11月26日に発表。介護施設での実証試験で得られた知見をもとに開発を進め、施設への正式提供をめざす。
認知症の人の介護業務は、多大な時間と労力を要するとされるが、労働力不足の影響で認知症の人とのコミュニケーション時間が短くなると、十分なケアが提供できなくなることも考えられるという。介護現場における人手不足の課題解決に向けて、川崎重工ではソーシャルロボットを開発。介護の質を維持・向上するとともに、介護職員の働きやすい環境を整え、人手不足を解決するとしている。
開発検討の一環として、同社では試作機を使った実証試験を介護付有料老人ホーム「ディアージュ神戸」(運営:JR西日本プロパティーズ)で7月に実施しており、認知症特有の「繰り返される会話」や「規則性のない会話」にも対応するなど、認知症の人とロボットとの会話が成立することを確認したという。
今後は多様な認知症ステージに適用できるよう、AI技術を活用したコミュニケーション機能を充実化。実証試験で得られた介護現場のニーズも踏まえ、認知症の人を見守る機能を搭載することも検討していく。
今回開発するソーシャルロボットの主な特長
- 認知症特有の会話の繰り返し、無規則性に対応
- 認知症の人に疲れや飽きがこないよう、うまく話題を切り替える
- ゆっくり・優しい口調で発声し、うなづき、あいづち、復唱を行いながら傾聴する
- 可能な限り継続して会話できるよう、認知症の人が回答しやすい内容で問いかける
- 相手を認識し過去の会話内容を学習。相手の特徴に合わせた会話を行う
- 介護職員に代わり、認知症の人を見守る(リアルタイムでのモニタリング・通知等)
同社はあわせて、「HANEDA INNOVATION CITY」(東京・大田区)内に新たなソーシャルイノベーション共創拠点「CO-CREATION PARK – KAWARUBA」を11月に開設したことも発表。「さまざまな社会課題解決に向け、意志ある多様な人々が出会い、集うことで価値創造し、社会実装をやり遂げる」ことをコンセプトに掲げている。
今回開発に着手した介護現場向けソーシャルロボットの領域においても、社内外と協創しながら、介護現場の課題に寄り添った事業起点でのソリューション開発に取り組むとのこと。