onsemiとSUBARUは11月19日、次世代アイサイトに関して協業を行う事を発表した。これに関する記者説明会が同日行われたので、その内容をご紹介したい(Photo01)。

  • 説明を行ったSUBARUの柴田英司氏

    Photo01:説明を行った柴田英司氏(SUBARU執行役員 CDCO(Chief Digital Car Officer)。4月のAMDとの協業の際にはCDCO兼技術本部 ADAS開発部長だったが、執行役員に昇格された

SUBARUは2024年4月にAMDとの協業を行う事を発表している他、同9月にはPanasonic Energyとの協業を発表している。また半導体メーカーでは無いが、今年3月にはAISINとも次世代電動車両向けeAxleに関する協業を発表するなど、さまざまな協業をアナウンスしている(Photo02)。

  • 他の会社との協業もあるが、まだ発表出来ないとの事

    Photo02:右上に「他」とあるように、他の会社との協業もあるが、まだ発表出来ないとの事

今回の協業であるが、次世代アイサイト向けにonsemiのHyperluxイメージセンサAR0823ATを採用するというのがその中身である。ただこれに先立ち、アイサイトv3や現行のアイサイトにもすでにonsemiのイメージセンサが採用されており、その意味では3世代目ということになる。

  • 8.3MPixelで最大解像度は3840×2160pixel

    Photo03:今回は8.3MPixelで、最大解像度は3840×2160pixelになる。これをフルに使える事が必要だった、との事

さて、アイサイトの基本的な機能というか原理そのものはAMDとの協業の記事で説明した内容と同じなので割愛させていただくが、ちょっと以前の記事の際のスライドからアップデートがあったのがこちら(Photo04)。

  • 以前のデータ

    Photo04:以前のデータはこちら。予防安全により救われるケースが57%→58%に向上しているが、大きくは変わらない

多少数字に差はあるものの、予防安全の充実で救われる事故が多い事には変わりはない。なのでアイサイトでこの予防安全を実現しよう、という基本方針に違いはない訳だ。

では今回の協業の骨子は何か? というと、onsemiのイメージセンサを、アイサイトに最適な形に作り込んだという話である。Photo05がその実例で、例えば夜間での歩行者検出とか反射、あるいは遠距離での認識などで、これまでは実装が難しかったという。

  • アイサイトに最適化したイメージセンサ

    アイサイトに最適化したイメージセンサによりリアルでの認識性能が向上したという

例えば夜間での歩行者認識はダイナミックレンジの拡大と露光制御で可能にしているのだが、この露光制御をアイサイトのAI側から可能にするという形で実現しているのだという。他にも色々改良点があり、いずれもSUBARUからonsemiに要望を出し、それに対してonsemiが対応策を用意するという形で実現出来たとの話であった。大枠で言えば、そもそもAIの精度を高めるためには解像度の向上が必須であるが、感度を変えずに高解像度化するとどうしても大型化するので、ルームミラーの取り付け部に収まるサイズに入らない。逆に大きさを変えずに高解像度化すると、画素あたりの面積が減るので感度が落ちる事になる。今回は解像度と感度を上げつつ、それでいて寸法を大型化しない(現行モデルのAR0231ATのパッケージサイズは10mm×11mmで感度は最大140dB、AR0823ATは8mm×11mmで同150dB)と、次世代アイサイトに必要とする要件を満たしつつ、かつSUBARUからの細かい要求にきちんと応えてくれた事が協業の理由であると説明した。

ちなみに質疑応答の中では、同じようにステレオカメラのみでADASを実現している例は他にTeslaしかないとした上で、要素技術的にはTeslaが自動運転を実現するために利用しているものと同種のものを(全部かどうかはともかくとして)獲得しているものの、SUBARUの目的は(同社の製造する)すべての車両にアイサイトを搭載して、死亡事故を減らすことであり、なので価格を低く抑えることが重要であると強調。確かに完全自動運転によって死亡事故が減らせるという議論もあり得るが、コストメリットを考えると難しいという話であった。

この協業に基づく次世代アイサイトは2020年台後半に投入される予定、となっている。具体的なタイミングはまだ説明できる段階ではないとしたが、同社は(トヨタとの協業とは別に)自前でBEV(電気自動車)を開発している事をすでに発表しており、この自前のBEVにはこの次世代アイサイトが搭載される、とした。