スペースワンは、国内外の5者と打上げ輸送サービス契約を締結し、カイロスロケット2号機に計5機の人工衛星を搭載することを明らかにした。2号機は同社の射場「スペースポート紀伊」(和歌山・串本町)から、12月14日午前11時~11時20分に打上げる予定。
スペースワンが打上げ輸送サービス契約を締結した5者のうち、1者については顧客の希望により現時点では非公開としている。
- Space Cubics
- TASA(Taiwan Space Agency)
- テラスペース
- 広尾学園中学校・高等学校とラグラポ
各者の概要と人工衛星の詳細は以下の通り。
Space Cubics
宇宙用コンピューターの開発を専門とする企業で、民生コンピューターの開発者と宇宙航空研究開発機構(JAXA)の職員がタッグを組んで立ち上げた、初の「共同設立型JAXAベンチャー」として2018年6月に設立。
宇宙空間をはじめとする過酷な環境で動作するコンピューターの開発に特化しており、自社製品のCubesat用コンピューター「SC-OBC Module A1」をはじめ、衛星、宇宙探査機、宇宙用ロボットといった機器向けにコンピューターを開発した実績があるとする。
カイロスロケット2号機に搭載する3U Cubesat「SC-Sat1」には、上記のコンピューターを2台積み、SC-Sat1の制御を担当。同機の長期運用を通じ、宇宙空間でのSC-OBC Module A1の耐障害性能を実証する。
TASA(Taiwan Space Agency)
宇宙計画の実行や宇宙インフラの構築、宇宙産業の発展を進める、台湾唯一の公的宇宙機関。主に国家衛星やロケット計画の運営を担い、宇宙産業の成長や人材育成にも注力しているという。
現在は低軌道上に、光学リモートセンシング衛星「フォルモサット5号」や気象観測衛星「フォルモ サット7号」、「トリトン」衛星といった複数の人工衛星を運用中。今後も「フォルモサット8号」や「フォルモサット9号」のプロジェクト、低軌道通信実験衛星、軌道ロケット計画などを推進していくとのこと。
テラスペース
超小型衛星を開発する2020年創業の企業で、同社初の50キロ級超小型衛星「TATARA-1」をカイロスロケット2号機に搭載して打上げる予定。醍醐寺塔頭菩提寺より依頼を受けた「宇宙寺院 劫蘊寺(ごううんじ)」や、JAXA追跡ネットワーク技術センターが開発し、佐賀県が製造した衛星レーザ測距(Satellite Laser Ranging/SLR)用小型リフレクター「Mt.FUJI」など、複数の機器を積んでおり、宇宙用部品等の軌道上実証を行うという。
ロケットの打上げ後は「人工衛星軌道投入サービス」と、「ホステッドペイロードサービス」の実証実験を実施。今後、年間1回以上の頻度で提供する計画を進めており、「よりはやく」、「より簡単に」軌道上サービスを提供するとしている。
広尾学園中学校・高等学校とラグラポ
2007年創設の中学高校一貫校である広尾学園は毎年、宇宙天文合宿を実施しており、卒業生の中には海外大学で宇宙工学を学ぶ学生もいるという。その後輩たちが今回の衛星プロジェクト「ISHIKI」に参加。実際に宇宙事業の経験を持つ専門家が所属するラグラポが同プロジェクトの打上げを支援する。
ラグラポの代表は、三菱重工業で「H-IIA」ロケットの設計や打上げ業務、JAXAで国際宇宙ステーション補給機(HTV、愛称「こうのとり」)の開発にも携わったという高野宗之氏。それらの経験をもとにした、非宇宙企業向けのプロジェクトマネジメント『すごいプロジェクト』は、効果の高いコンサルティングとして評価されているとのこと。