ボッシュは11月12日、2024年10月1日付で同社代表取締役社長に就任したクリスチャン・メッカー氏、同じく取締役副社長に就任した松村宗夫氏、西村直史氏の3人が登壇するメディアブリーフィングを開催。2024年のハイライトと、今後の取り組みについての説明を行った。

  • クリスチャン・メッカー氏

    右から2024年10月1日付でボッシュの代表取締役社長に就任したクリスチャン・メッカー氏、同じく取締役副社長に就任した松村宗夫氏と西村直史氏

2024年のハイライト

メッカー氏は、2024年のハイライトとして大きく5つのトピックスを取り上げた。1つ目は4月に開催された新入社員の入社式。「差別化。ほかと違ったことをやるのが重要と思っている」ということで、大学などを卒業したばかりの新入社員たち自身に、イベントをオーガナイズしてもらう形での入社式を執り行ったという。このイベントは、新入社員たちが自分たちでイベントのルールを決めて実行したもので、内容としては、オリエンテーリングのように社内のみならず、街全体を含めて、チェックポイントを設けて、そこに訪れることで得られるポイントを加算。最終的に獲得したポイントを支払う形で、ボッシュ社員たちなどから集めた古着を獲得して、それを同社役員に着せてファッション性を競うというものだったそうで、グランプリを獲得したチームには、クラウス・メーダー社長(当時)とのディナー券が贈呈されたそうだ。

  • 入社式の様子

    入社式の様子。右手を挙げているのがクラウス・メーダー社長(当時)

2つ目は横浜市都筑区に建設された新社屋への移転。5月より徐々に東京都・渋谷区にあった本社機能の移転を進め、9月にオープニングイベントを開催した。「移転を開始してから6か月ほど経つが、社員の皆がこの新社屋を気に入ってくれていると思っているし、社員の皆も新オフィスで、多くの人たちとコラボレーションができることを喜んでいる。新社屋の建設というのは大きな投資になるが、日本のモビリティ業界への長期のコミットメントを表すものだ」(同)と、広大な新社屋ではさまざまな顧客やパートナーとのコラボレーションが活発に進められていることを強調する。

  • 2024年5月より入居を開始した新社屋

    2024年5月より入居を開始した新社屋。2024年9月6日に竣工式が執り行われた。また左側に見切れて移っている建物は2025年3月開館予定の区の文化活動拠点となる都筑区民文化センター「ボッシュ ホール」(ボッシュがネーミングライツ契約を2025年1月から2035年3月まで締結)。本社1Fには地域開放施設「ボッシュカフェ(cafe 1886 at Bosch)」も開設されており、多くの地域からの利用者でにぎわっている

3つ目はそうしたパートナーや顧客を交える形で9月3日に新社屋で開催された「Bosch Japan AI Day」というイベント。AIスタートアップなども招く形で、AIが持つ可能性についてのさまざまなプレゼンテーションなどが行われたイベントであったという。「AIというのはさまざまな産業にインパクトをもたらしている。新技術を使わないと、変化に取り残される可能性がある。AIが持つ可能性を理解し、使いこなしていく必要がある」という思いからの開催となったとのことだが、すでに同社内でも独自の生成AIチャット「AskBoschJP」を開発・活用しているという。同氏も「日本語-英語間の翻訳や、日本語をより簡単な表現にしたり、ローマ字にするなどといった使い方をしている」とその便利さを実際に使って体感しているという。

  • 「Bosch Japan AI Day」の様子

    「Bosch Japan AI Day」の様子。生成AIチャットはグローバルでの利用展開が進められているという

4つ目は、12月5日に開催される予定の日本カー・オブ・ザ・イヤー最終選考会・表彰式。新社屋の入り口部分に最終選考会に残った候補のクルマをずらりと並べて選考を行うとのことで、「ボッシュとしてのイベントではないが、この横浜の、この場所を使いたいと思っていた。そうすることで、地域社会への貢献にもつながる。我々はこうしたイベントを通じて、地元をサポートしたいと考えている。日本カー・オブ・ザ・イヤーというイベントはボッシュにもうってつけのイベントだと考えている」と、1企業としてのみならず、地域社会全体へのボッシュとしての取り組みが波及することへの効果に期待をのぞかせる。

  • 日本カー・オブ・ザ・イヤー最終選考会・表彰式

    12月5日には日本カー・オブ・ザ・イヤー最終選考会・表彰式を、社屋の入り口前などに最終選考に残ったクルマを並べる形で実施する予定だという

そして5つ目は、2024年1月よりボッシュ モビリティが始動したこと。同氏は発足時よりボッシュ モビリティ 東アジア・東南アジア地域セクターボード プレジデント 兼 最高技術責任者に就任しており、同地域における戦略および技術面を統括している。また、西村氏も東アジア・東南アジア地域セクターボードの最高営業責任者、松村氏も同じく最高執行責任者 兼 最高財務責任者に就任している。「ワールドワイドでモビリティ事業の再編成が進められている。背景には地域ごとにフォーカスすることが重要になっているということが挙げられる。アメリカ、中国、インドおよび東アジア・東南アジアにセクターボードが設置されているが、この設置目的は、それぞれの地域ごとの事業のスピードアップと地域顧客のニーズに迅速に対応すること」(メッカー氏)だとし、西村氏、松村氏を含めた3人で東アジア・東南アジア地域をけん引していくとする。

  • メッカー氏、松村氏、西村氏ともにボッシュ モビリティの東アジア・東南アジア地域セクターボードメンバー

    メッカー氏、松村氏、西村氏ともにボッシュ モビリティの東アジア・東南アジア地域セクターボードメンバーでもあり、3人で協力して地域全体での顧客ニーズへの対応を図っていくとする

ボッシュ社長として目指すは認知度の向上と地域貢献

同氏は、今後の取り組みとして「ボッシュの認知度を向上させることと地域とのコラボレーションを活性化させていくこと」を掲げる。日本カー・オブ・ザ・イヤーのイベント開催もそうした認知度向上ならびに地域貢献につながる取り組みとしているほか、都筑区で開催されるクリスマスマーケットへの参加なども予定しているとのことで、地域に根付いた企業となる方向性が示されているようである。

また、戦略的なチャレンジとしては、日本におけるモビリティ事業セクター以外の事業拡大を掲げる。というのも、世界全体におけるボッシュグループの売り上げ比率のうち、モビリティ事業は60%ほどであるが、日本だけで見ると90%以上を占めているため。2025年には日立製作所の子会社である日立グローバルライフソリューションズとジョンソン・コントロールズ・インターナショナル(JCI)の空調事業合弁会社「ジョンソンコントロールズ日立空調(JCH)」の買収が完了する見通しで、国内では「白くまくん」のブランド名で知られる家庭用エアコンなどをグローバルで展開していくこととなる。「白くまくんは非常に強力なブランド。このエアコン事業の買収プロセスは進行中の段階にあるが、大きなステップであり、モビリティ事業以外の事業を伸ばしていくための大きなチャンスだと思っている」(同)と、そのブランド力などへの期待を寄せる。

一方のモビリティ事業については、セクター内における協業の促進と日本の顧客への貢献を掲げる。「地域内におけるコラボレーションをさらに強化していく。ASEAN地域などは日本の顧客にとっても重要な市場。日本の顧客が重要とする地域でのビジネスのさらなるサポート強化を図っていきたい」と、あくまで日本の顧客の成長を支えていく姿勢を強調していた。

  • メッカー氏の今後の取り組みの概要

    メッカー氏の今後の取り組みの概要

このほか、副社長である松村氏は、管理部門の責任者としてのみならず、ビークルモーション事業部の事業部長も兼任している立場から、「本社機能と事業部門の横のつながりの強化」を進めることで、新たなシナジーの創出につなげたいとするほか、地域における拠点間連携などを推進することでパフォーマンスの向上を目指すことで、顧客とのパートナーシップを通じて長期的な成長を実現できる体制づくりを進めていきたいとしている。

  • 松村氏の今後の取り組みの概要

    松村氏の今後の取り組みの概要

もう1人の副社長である西村氏は、顧客とのコミュニケーションを密にしていくことで、顧客の世界展開をサポートしていき、ともに成長していくことを目指すとする。「共感が重要になっている」との観点から、そうした共感とビジネスを結び付けて、顧客と一緒に社会の困りごとを解決していけるパートナーとして認めてもらうことを目指していきたいとのことで、「大きな意味で、顧客の成長に寄り添った技術オリエンタルな会社であり続けたい」としていた。

  • 西村氏の今後の取り組みの概要

    西村氏の今後の取り組みの概要