サブスクリプション(サブスク)ビジネスの導入・運用支援を手掛ける米Zuoraは11月12日、2024年5月に買収を完了したインドTogaiの製品を11月より日本国内で提供開始すると発表した。Togaiは、企業のサブスクビジネスにおいて、柔軟な従量課金プランを実現するためのプラットフォームを提供している。

12日の記者発表会に登壇したZuora 最高経営責任者(CEO)のティエン・ツォ氏は「日本国内の消費者は、サブクスの課金プランや支払い方法に関してより多くの選択肢を求めている。また生成AIブームにより、多くの企業が生成AIの導入と収益化に試行錯誤している状況だ。つまり、従来のサブスクリプションでは十分ではない。顧客や市場のニーズに応じて収益化のモデルを進化させる必要がある」と、Togai製品を国内にも展開する狙いを語った。

  • Zuora 最高経営責任者(CEO) ティエン・ツォ氏

    Zuora 最高経営責任者(CEO) ティエン・ツォ氏

米Zuora CEO「選択肢は多い方が良い」

1013人の日本人消費者を対象にした米Harris Pollの調査によると、約7割の人がサブスクの課金プランの柔軟性が重要だと回答した。月額定額プランだけではユーザーニーズを満たすことが難しくなっており、競合製品との差別化競争も過熱している。生成AIを活用したサブスクを提供する企業も増えているが、単なる定額課金の値上げでは対応しきれなくなっているのが現状だと同社は指摘する。

「収益化のモデルを少数に絞ってビジネスを展開すると、顧客ニーズとその顧客を獲得する手段が限られてしまう。この方法で売上を伸ばすのは容易ではない。選択肢は多い方が良い」(ツォCEO)

  • 日本消費者の約7割が「課金プランの柔軟性が重要」と回答

    日本消費者の約7割が「課金プランの柔軟性が重要」と回答

こうした背景のもと、Zuoraは柔軟な収益化モデルの提供を支援するTogaiの従量課金ソリューションの国内提供に踏み切った。

エンドユーザーの利用状況を可視化

同ソリューションは、まず、複数のシステムから使用量データを収集し課金単位に変換する。そして、使用量に基づいてサブスクの契約ごとの金額を算出し、使用量と請求金額を可視化する。既存の請求システムで請求書の発行が可能で、規模の拡大にも対応できる。約1カ月と短期間で導入できる点も特徴だ。

  • Togaiの従量課金ソリューション 概要

    Togaiの従量課金ソリューション 概要

  • データ使用量や請求金額を可視化できる

    データ使用量や請求金額を可視化できる

企業が従量課金サービスを始める場合の課題は少なくない。自社開発の場合、仕組みを準備するのに時間とコストがかかることや、課金モデルを変える際に回収に時間がかかってしまうこと、大量の生イベントデータを収集・計測する基盤がないことなどが挙げられる。またマニュアル作業で運用する場合も、バックオフィス業務に多大な時間がかかりミスが多発するケースも考えれらる。

ツォCEOは「Zuoraの従来のプラットフォームがなくてもTogaiだけで従量課金が手軽に素早く始められる。エンドユーザーの利用状況を可視化することで、柔軟な料金プラン提供の実現につながるだろう」と強調した。

  • Togaiの従量課金ソリューション 特徴

    Togaiの従量課金ソリューション 特徴

日本市場でも急成長するZuora、国内データセンター新設

2007年に創業したZuoraは、シリコンバレーに本社を置き、ロンドンやパリ、北京、東京などにもオフィスを構え、150カ国以上でサービスを展開している。2015年に日本法人であるZuora Japanを設立し、日本国内での事業を開始した。

世界中の1000社以上にサービスを提供しており、日本国内においてもトヨタ自動車やソニー、朝日新聞社、富士通、三菱電機、SmartHRといった各業界のトップ企業がZuoraの製品を導入している。

Zuoraの日本法人のZuora Japan 代表取締役社長の桑野順一郎氏は「日本法人の業績は非常に好調だ。新聞社や総合電機メーカー、SaaS企業などで特に採用が進んでいる」と説明した。同氏によると、新聞社では国内売上トップ4社のうち3社が、総合電機メーカーではトップ10社のうち7社が、自動車業界ではトップ5社のうち3社がすでにZuoraの製品を導入しているという。また、「欧米や日本で急成長しているSaaS企業の多くはZuoraを採用している」(桑野社長)とのことだ。

  • Zuora Japan 代表取締役社長 桑野順一郎氏

    Zuora Japan 代表取締役社長 桑野順一郎氏

またZuoraは12日、日本市場向けに新規データセンターを稼働開始したと発表した。日本国内データストレージでのデータ保護とプライバシーを強化につなげ、処理速度を従来と比べ約30倍まで引き上げる考えだ。

インターネットサービスプロバイダー(ISP)ベンダーのビックローブは、同データセンターの日本国内で第1号となるユーザー企業だ。同社はすでに、課金・請求システムにZuoraのソリューションを採用しており、サブスク管理の効率化につなげている。

ビックローブ 取締役執行役員常務 プロダクト技術本部長の高宮展樹氏は「国内データセンターでZuoraソリューションを活用することで、万一の障害発生時にも迅速なサービス再開が可能になる。ユーザーに信頼性の高いサービスを提供し続け、さらなる事業成長を目指していく」と狙いを語った。

  • ビックローブ 取締役執行役員常務 プロダクト技術本部長 高宮展樹氏

    ビックローブ 取締役執行役員常務 プロダクト技術本部長 高宮展樹氏