NECは11月6日、同社の経営の方向性を発信することを目的に、複数のメディアを対象としたグループインタビューを田町本社で実施した。

インタビューでは、代表取締役 執行役員社長 兼 CEOの森田隆之氏が、生成AIの活用戦略や今年5月に発表した価値創造モデル「BluStellar」について説明した。

  • 代表取締役 執行役員社長 兼 CEOの森田隆之氏

    代表取締役 執行役員社長 兼 CEOの森田隆之氏

BluStellarと生成AIについて

--BluStellarを発表してから半年くらい経ちますが、これまでの手応えと25年度までに掲げている4900億円の売上目標に対する課題があれば教えてください

森田氏:元々、NECは生成AIに関して、NEC Digital Platformという名前でこの数年間は取り組んでいましたが、今回新たに「BluStellar」というブランドをつけることで、こんなにインパクトをもたらすとは、うれしいサプライズとなりました。

顧客へのアピールという面もありますが、社内への影響も大きく、社内でもBluStellarのビジネスモデルなどの理解が相当深まったのではないかと思います。

その中で、現在はオファリングモデルの準備が加速的に進んでおり、これを充実させることが課題であり、事業を計画以上に伸長させていくためのカギとなると考えています。

--生成AIについて、2025年度末までに約500億円の売上を目指す方針を掲げていますが、来年度の生成AIに関する目標について具体的に教えてください

森田氏:生成AIは今、急速に進展しています。特に業務系へのAI適用が、この1年で加速度的に進むのではないかと考えています。

現在、AIエージェントの話が増えていますが、NECでも研究所で3年ほど前から「AIオーケストレータ」という名称で、AIエージェントの研究開発を進めています。

こういったものが実現して、データアセットの取り組みや、著作権・倫理系の仕組みが出来上がっていくことで、業務への適用が徐々に実現しています。

つまり、業務系で使っていくAIがいよいよ出てくる。そのあたりも含めて、業務の中で生成AIが活躍するようになると思っています。

--今年は各社が生成AIサービスを展開していますが、NECの事業展開の方向性は?

森田氏:NECの強みは「生成AIをゼロから作っていること」です。研究開発のために3年前にすでにGPU約1000基を持っており、それを使用できる環境にあります。これがNECが競争優位性を持てている理由でもあります。

つまり、どのように生成AIが作られていて、どのように進化していくのかについて、深い理解に基づく事業展開が可能であることが強みです。

また、アメリカでも進んでいるSmall Language Modelについては、NECではスマートフォン、サーバ、データセンター、クラウドなどそれぞれに搭載できるサイズをそれぞれのレベルに合わせて持っています。巨大なLLMの開発は協業で行いますが、データセット含めてクローズで学習・チューンアップできる形でNECが独自で提供・進化させることができます。

そういったものを使って業務・業種に特化したさまざまなアプリケーションの領域にAIを使って提供していきたいし、その領域が最も市場としては最終的に大きくなると思っています。

NECの人材活用とジョブ型雇用について

--ジョブ型が浸透し、カムバック採用なども進めていると思いますが、どのような業種・業界・年齢の人が戻られて活躍されているのでしょうか?また、今後こういったことを増やしていく場合の課題は?

森田氏:思った以上にカムバック採用が多い。最近、デジタル・ガバメント/デジタル・ファイナンス領域のカムバック採用の社員と会いましたが、その社員は20年前にM&A関連業務で法務を担当していました。

これは一例ですが、幹部も含めてあらゆる領域で戻ってきてくれています。執行役の松本康子CAO(最高監査責任者)もカムバック採用であり、社外で上場会社の役員を経験した後にNECに戻ってきました。また、AIやセキュリティの開発をしたいとして戻ってくるエンジニアもいます。

今後、ジョブ型の人事制度をグループ会社へも展開していくので、これを梃子にして、さらなる制度の充実を図っていきたいです。

--同業他社では、業績は良いが早期退職を募る企業も出ている中で、NECは人材・再配置についてどう考えているのでしょうか?

森田氏:NECでは、異業種間で人材の取り合いや競争がますます激しくなってくると考えています。

例えばわれわれの業種で見たとき、コンサル企業との人材の奪い合いがあり、その中でも外資系の企業はかなり多く、報酬体系も非常にコンペティティブになっています。またAI、セキュリティなどのDX人材になると、同業他社だけでなく、金融機関や製造業との競争に勝つ必要が出てきます。

加えて、過去の「就社」ではなく、自分でキャリアを作っていくという考え方の若い人が増えています。そういった向上心のある、やる気のあるタレントに対して、キャリアを積める魅力のある職場、報酬など競争力があるものを作っていくことが絶対に必要だと考えています。

もちろんこれはNECだけでなく、これからの社会を考えると、どの企業にとっても必要になっていくと思います。

--先ほどジョブ型に関して来年度からグループ会社への展開の話がありましたが、具体的にどのような取り組みをするのか、また来年度の人材投資について教えていただきたいです

森田氏:2024年も採用は、本体のみで新入社員が700名超、グループ会社を含めると1300名ほどになりました。中途採用も継続しており、人材の増強は継続的に進めています。

またこの2年ほどは、教育やリカレント関係への投資も増やしています。教育制度や教育投資にも力を入れており、これからもその部分について充実させていきたいと思っています。

ジョブ型については、需要の高いタレント人材に対して訴求力を社内外に向けて上げていきたいと思っています。特にAIやセュリティ領域における人材については、グループ全体でジョブ型の考え方を合わせ、人の流動化を高めて、組織力を高めていきたいと考えています。