楽天グループ(楽天)は11月6日、都内で自動配送ロボットによる小売店や飲食店の商品配送サービス「楽天無人配送」の提供を開始した。東京都中央区の晴海全域、月島、勝どきの一部(晴海周辺)のエリアで提供する。楽天として自動配送ロボットによる配送サービスを都内で提供するのは初めてだ。
楽天の無人ソリューション事業部 ヴァイスジェネラルマネージャー 牛嶋裕之氏は、「『楽天市場』などECが拡大し、フードデリバリーなど新しいサービスが普及する中で、日本は人口減少社会なので運び手が不足している。当社はこの自動配送ロボットを活用し、デリバリーサービスをもっと普及させ、人々の生活をより便利にしていきたいと考えている」と無人配送サービスに取り組む意義を説明した。
▲楽天グループ 無人ソリューション事業部 ヴァイスジェネラルマネージャー 牛嶋裕之氏
楽天はこれまで、2021年3月に国内で初めて自動配送ロボットの公道走行によるスーパーマーケットからの配送サービスを実施し、2022年11月からは期間を限定しない定常サービスをつくば駅周辺にて展開してきた(現在は終了)。これまで蓄積してきたノウハウを活用し、経済産業省の令和5年度補正予算「物流効率化に向けた先進的な実証事業」における「自動配送ロボット導入促進実証事業」による補助を受けて、今回の晴海周辺でのサービス提供に至った。
昨年4月に改正道路交通法が施行され、自動配送ロボットが遠隔操作型小型車という新しいカテゴリーに割り当てられ、行動を走行することができるようになった。ロボットデリバリー協会の安全基準に合格し、合格証とともにそのロボットを使用する旨を、地域の警察署に届け出ることで、ロボットの公道走行が可能になる。
<3店舗の5300品超をロボット配送>
今回のサービスは、スマホ向けの専用サイトから注文することで、自動配送ロボットが指定の場所まで配送するというもの。年末年始などの一部を除く毎日営業しており、配達時間は10:00~21:00。雨天時も営業するという。
1回当たりの配送料は税込100円(商品代は除く)としている。支払い方法はクレジットカード、「楽天ポイント」、「楽天キャッシュ」の3通り。
対象店舗は「スターバックス コーヒー 晴海 トリトンスクエア店」「スーパーマーケット文化堂 月島店」「吉野家 晴海 トリトンスクエア店」の3店舗。温かい料理や冷たい飲み物、生鮮・冷凍食品、日用品など5300品以上の商品を取りそろえている。今後、対象店舗や品目は順次拡大する予定だ。
配達場所は晴海1丁目~5丁目と月島2丁目、4丁目の一部と勝どき2丁目の一部におけるマンションやオフィス、公園などの62カ所が対象となる。在宅時に加えて仕事の合間、外出時などでも利用可能だという。
▲晴海地域は歩道が広く自動配送ロボットの配送サービスに適している
牛嶋氏は「今年8月にテストサービスを実施していた。走行の安全性に問題はなく、利用者からは『商品が早く欲しいときに便利』『ペット連れてスーパー行けないので利用した』『ロボット配送の体験が楽しい』『ロボットに愛着や親しみが湧いた』などのお声をいただいた」と話す。
<信号は遠隔操作、歩行者を検知して自動停止>
利用者は専用サイトから好きな商品を選択し、最短30分から最長6日先までの15分ごとの枠から配達時間を指定する。注文完了後、スタッフが自動配送ロボットに商品積み込み、配達を開始する。
▲スタッフが商品を自動配送ロボットに積み込む
自動配送ロボットは人が随行せずに自動走行および遠隔操作で公道を通り、配達する。交差点では、遠隔操作者が信号機の状況を見て、通行を指示する。
▲信号待ちをする自動配送ロボット
歩行者が自走配送ロボットの直前を横切ると、歩行者を検知し、自動で停止する。
▲横切る人を検知し、自動的に停止(デモンストレーション)
商品が指定の場所に到着すると、利用者は自動音声電話とSMSにより通知される暗証番号を機体の操作パネルに入力することで、商品を受け取ることができる。
▲利用者が暗証番号を推し、開錠した機体から商品を受け取る
<Cartken Inc.の機体を三菱電機のグループ会社が調整>
今回のサービスで使用する機体はCartken Inc.が開発し、三菱電機のグループ会社であるメルコモビリティーソリューションズが今回のサービス向けに調整したもの。
「Model C」という型番で、前後左右に遠隔監視用のカメラ、前方に3つの障害物検知用のカメラを設置している。機体サイズは長さ71 cm × 幅45.5cm × 高さ120cm。視認性確保のための旗を付けている。積載容量は約24L、最高速度は 5.4km/h。
機体は高度なAIモデルやアルゴリズムを活用した自動走行機能や衝突回避機能を備えており、一般社団法人ロボットデリバリー協会の安全基準に基づく審査にも合格している。
楽天も独自にロボット配送の専用サイトや配送管理システムを開発・構築しており、複数台同時運行のロボット配送におけるオペレーションを最適化し、顧客に便利で快適なサービスを提供する。
今回のサービスでは、自動配送ロボットを2台使用する。利用状況に応じて稼働台数を増やす可能性もある。
牛嶋氏は、「海外では、ロボットの機体の空いているスペースを広告枠として活用する事例があり、今回は試しに『楽天モバイル』のサービス紹介を入れている。(ピンクの機体は)住民から『かわいい』とご好評いただいている」と話す。