米ジョンソン・エンド・ジョンソンが日本での医薬品事業に力を入れる。海外で承認された新薬が日本で使えるようになるまでに長い時間がかかってしまう「ドラッグ・ラグ」と、開発された新薬が海外では承認されても日本では使えない「ドラッグ・ロス」が日本の医療業界を揺さぶっている。そんな中で、同社は外資系企業でありながらも、日本に新薬を投入することに注力しているのだ。
同社の日本法人であるヤンセンファーマ社長の關口修平氏は4月の薬価制度改革をポジティブに受け止めているとした上で「日本市場の魅力が上がることによって、日本のニーズに合った開発戦略をグローバルに訴求していきたい」と語る。
具体的には、29年までに日本で新薬や既存製品の拡大も含めて約50件の承認取得を目指すと宣言。軸は「がん」「免疫疾患」「精神・神経疾患」の各領域で、29年には売上高の4割以上を今後発売する新薬が占める想定。
同社の23年の売上高は薬価ベースで約4170億円。成長率は前年同期比約4%で、2桁台の第一三共や大塚ホールディングスには劣るものの、5.9%増の武田薬品工業や5.6%増のアステラス製薬に並ぶ。
關口氏は「27年には2桁成長を目指す」と強調するが、その根拠が「世界最大規模の開発力と日本における実行力」。グローバルで1万3000人以上の科学者と研究者を抱え、23年の研究開発への投資額は151億ドル。その金額は世界第3位。
ヤンセンファーマは25年に10件の承認取得(新規有効成分と適応拡大の合計)を予定し、29年までに計50の承認を計画。相次ぐ新薬の投入で27年以降は再び2桁成長に向かうという算段。現在日本で承認申請中の炎症性腸疾患治療薬「トレムフィア」や多発性骨髄腫治療薬「テクリスタマブ」などが貢献すると見られ、肺がん領域にも新たに参入。24年9月には肺がん治療薬「ライブリバント」の承認を厚生労働省から取得している。
ただ、製薬業界は新薬開発で失敗すれば、たちまち経営が立ち行かなくなる。実際、同社も大規模な人員削減を行った過去がある。日本という特殊な市場で存在感を高めることができるかは新薬にかかっている。