NTTは、4K120Hz/FHD240HzまでのHDMI信号を、0.1ミリ秒以下で非圧縮のまま、長距離伝送信号へ変換する技術を開発したと発表した。

IOWN APNとの組み合わせにより、低遅延と高画質、高音質を実現した映像伝送が可能になり、映像を劣化させることなく遠隔地で再現。同一の場所にいるかのようなリアルタイムコミュニケーション空間を実現できるという。

NTTネットワークイノベーションセンタ トランスポートシステムプロジェクト担当課長の武智宏人氏は、「IP網の利用を前提とした従来技術では、ネットワーク遅延や、ネットワークの帯域不足に伴う信号圧縮によって遅延が発生していたほか、信号圧縮による画質低下や音質低下が発生してしまうため、リアルタイム性と高精細化は達成できなかった。今回の技術によって、映像品質の劣化や通信による遅延変動なしに遠隔地への映像転送を可能にできるようになる。また、IOWN APNで活用できる信号に変換することで、低遅延ネットワークを活用。低遅延と高精細映像を両立することも可能になった。今後は、ユースケースの拡大の検討を進めることで、豊かな社会の実現につなげたい」と述べた。

  • 今回の研究開発の背景

    今回の研究開発の背景 (提供:NTT)

同技術は、ライセンス販売を行い、最終製品やソリューションへの組み込みが可能になる。映像伝送メーカーなどへの提供を想定している。

今回の技術は、HDMI信号を、大容量、固定帯域、固定遅延のレイヤ1信号(OTN信号)に直接収容することで、映像信号の圧縮伸張に要する処理時間を不要とし、映像品質の劣化や通信による遅延変動がないまま、遠隔地への映像転送を可能としている。

これにより、ファイバー伝搬の遅延時間が無視できる程度に小さい場合には、送信側での映像入力から受信側での映像出力までの遅延時間を0.1ミリ秒以内に抑えているという。

また、4K120HzやFHD240Hzという高解像度および高リフレッシュレートの映像信号を圧縮なしに伝送することで、動きが速い映像でも高精細で、動きに劣化がなく、遠く離れた場所への伝送が可能になる。

  • 今回開発した技術の概要

    今回開発した技術の概要 (提供:NTT)

さらに、FPGA上で利用可能な回路情報(FPGA-IP)として実現しているため、ポート数やサイズなどの利用ケースに応じて、多様なハードウェアとの組み合わせが可能になる特徴も持つ。NTTでは、回路の動作環境として、AMD製FPGAであるVertex UltraScale+シリーズおよびVersalシリーズを実装。FHD60Hzから4K120HzまでのHDMI信号を収容し、キーボードやマウスなどの HIDデバイスのUSB信号も収容する。

  • FPGAに実装して利用することが可能

    今回開発した技術はFPGAに実装して利用することが可能 (提供:NTT)

NTTの武智氏は、「今回の技術は、離れた場所にいながら、多数の人が、同じ空間を同じ時間に楽しんだり、共同作業を行ったりといったリアルタイムコミュニケーションでの活用を想定している。こうした環境において没入感を得るためには、映像を複数地点で同時に感じるリアルタイム性と、実物を見ているように感じるための高精細がより求められる。今回の技術を活用することで、東京と大阪といった離れた拠点同士を結んでも、同一の場所にいるかのようなリアルタイムコミュニケーション空間の実現が可能になる」とし、「拠点間でのタイミングをあわせることが重要な遠隔演奏や遠隔合唱、ダンスレッスンなどの遠隔アクティビティのほか、人同士の掛け合いが必要なディベートや漫才などでも遠隔を結んだ利用が可能になる。さらには、リアタイムの高精細映像による遠隔監視が求められる工場のライン監視、鉄道や交通の監視などへの応用が見込まれる。高精細映像が求められる分野や、リアルな体験を得られる没入感が高いアプリケーションの利用拡大を期待している」と述べた。