TrendForceによると、2025年にHBM市場が供給過剰に陥る可能性に対する懸念が出てきており、DRAMメーカー各社が2025年に計画通りにHBM3eの生産を増強できるのかどうか不透明な状況になりつつあるという。
同社によると、HBM3e 12-Hi(12層品)の生産で安定した歩留まりを達成するための学習曲線が急峻に推移した場合、それに伴う生産能力の過剰がどの程度発生するのかどうかを判断するのは難しいためだという。すでにSamsung Electronics、SK hynix、Micron Technologyの3社ともに2024年第3四半期までに最初のHBM3e 12-Hiのサンプルを顧客に出荷。現在、顧客側での検証が進められており、中でもSK hynixとMicronについては2024年末までに顧客側の検証が終わるものと予想されている。
現在のDRAMサプライヤ各社の生産能力拡大計画を見ると、SamsungはHBMに必要なTSVプロセスの処理能力を2024年末の月産12万枚から2025年末には同17万枚まで引き上げるほか、SK hynixも同期間内に25%の能力増を図るとしており、こうした生産能力の拡大が2025年にはHBMの供給過剰を引き起こすのではないかと見る向きもあるが、実際問題として、これらの生産能力拡大が計画通りに実現されるかどうかは顧客が進めている検証結果次第であり、現時点では不確定な要素と言える。
また、TrendForceでは、HBM3およびHBM3e 8-Hi製品(8層品)が安定した歩留まりを達成するには少なくとも2四半期ほどの期間が必要だったと指摘しており、この流れが踏襲されると考えればHBM3e 12-Hiの歩留まりが急に高まることはないと予想されるとする一方、NVIDIAのB200やGB200、AMDのMI325やMI350などのAI向けGPUがHBM3e 12-Hiを採用されることが見込まれるものの、システムコストに見合うだけの厳格な安定性が求められるため、量産が複雑になり、不確実性が増す方向に向かうことが考えられるとする。
とはいえ、AI向けGPUのHBM3e採用そのものは今後も増えていくことが見込まれることから、TrendForceでも2025年のHBMビット需要全体の80%以上がHBM3eとなると予測しているほか、その半分以上が12-Hi製品となり、2025年後半には(8-Hi含め)メインストリームとなるとの見方を示す。もし、こうした状況で供給過剰が生じれば、旧世代のHBM2eやHBM3が影響を受ける可能性がでてくるという。ただし、DRAMサプライヤ各社の影響度合いについては、各社の製品構成次第となるため、予測は難しいともしている。
なお、TrendForceでは2025年に、HBMがDRAMビット出荷数量全体の10%を占めるまでに成長すると予測しているほか、DRAM市場全体の収益へのインパクトとしては、高い価格を考えると30%を超す割合を占めると予想されるとしている。