東京医科歯科大学と東京工業大学(東工大)が統合する形で新たな国立大学法人「東京科学大学(Science Tokyo)」が2024年10月1日付で創立された。同大は同日、説明会を開催し、今後の大学の方向性などに関する説明を行った。
同大の初代理事長には旧東工大 教授の大竹尚登氏が、学長(大学総括理事)には旧 東京医科歯科大学長の田中雄二郎氏がそれぞれ就任。一法人一大学の国立大学としては初めて、理事長職と学長職を分けた大学となった。そんな科学大のミッションは「『科学の進歩』と『人々の幸せ』とを探求し、社会とともに新たな価値を創造する」というもので、コアバリューを「常識や型にとらわれず、あらゆる知と技術を探求し、自在に融合させる」「一人一人の個性や想いを尊重し、豊かな創造の文化を育む」「自らの在り方をつねに問い続け、果敢に変革し続ける」という3つを掲げている。また、タグラインとして「科学の進歩と、人々の幸せと。」を掲げている。
大竹理事長は、「特徴ある大学同士の統合。(母体となった)2つの大学は異なる分野の専門大学であり、早期の融和、統合のメリットの最大化を果たす必要がある」と今後の方向性を示し、「社会に還元できる未来を生み出す人材を輩出できる大学」となるべく運営を行っていくことを強調。また、略称となるScience Tokyoについて「国内外で広く認知されていければと思っている」とし、Science Tokyoのシンポジウムシリーズとして、2025年1月に予定している基幹シンポジウムの開催を第1弾として10月まで継続的にシンポジウムを開催するなど、新たな大学名称/略称の浸透にも努めていくとする。
一方の田中学長は、「理工学と医科歯科の両方の学部を有する大学はほかにもいくつかあるが、それらとの最大の違いは、理工学の専門を極めている集団と医歯学を極めている集団が、新たに出会うという点」と指摘。それぞれの異なる文化を持っていた人たちが出会うことで、新たな驚きや発想が生まれ、視野の広がりや将来のイノベーションの礎ができることが期待され、そうした機会の創出促進に向けた取り組みを進めていくとするほか、研究面でも、さまざまな社会課題の解決を医歯理工の融合によるイノベーションの創出が重要との考えを示し、その実現を推進する3つの研究組織(総合研究院、未来社会創生研究院、新産業創生研究院)を設立し、バックグラウンドが異なる研究者たちが、ともに新たな価値を生み出す場所となることを目指していくとする。
さらに、開かれた大学、開放系の大学として、社会、企業、その他の教育機関などの垣根を超える形で実践的な教育や学びの場を作っていきたいとし、学生が社会に出た後であっても、学び直しなどを含め、出たり入ったりできるような大学を目指す方向性を示唆。海外からの留学生含めて、そうして多くのバックグラウンドが異なる人材が常に大学内に呼び込むことで、新たな出会いと学びの場を構築し、社会に新たな価値をもたらし、よい未来を創っていけるにぎやかな大学にしていきたいとしている。
なお、同大を目指す高校生などに向けて大竹理事長は、今の高校生は豊かな才能を持っているということを前提に「頭の使い方を鍛えて欲しい」と、多角的な物事の見方ができるようになることで、将来が違ってくる可能性があると指摘。一方の田中学長は、大学として統合というチャレンジを進めてきたことを踏まえ、「チャレンジ精神が旺盛な学生に入学してもらいたい」とし、入試を含め、そういうチャレンジをしたいという人が評価されるような仕組みを作っていきたいとしていた。