印Tataグループの統括会社であるTata Sonsの100%子会社であるTata Electronicsと台湾Powerchip Semiconductor Manufacturing(PSMC)は9月26日、インド西部グジャラート州ドレラに半導体工場を建設する契約を締結したことを発表した。

インド初の300mmウェハ工場となる予定で、電源管理IC、ディスプレイドライバ、マイコン、ロジックなどの半導体を製造して、Tataグループ内部での活用含めた市場の需要に対応するという。この新工場の生産能力は月5万枚で、2万人以上の直接ならびに間接人材の雇用が創出される見込みで、Tataグループのマルチファブ構想により、将来的には10万人以上の熟練労働者の雇用が創出されるという。

総投資額は最大9100億ルピー(約1兆6000億円)を見込む。PSMCが工場の設計および建設をサポートするほか、幅広い半導体技術のライセンス供与を行う一方、実際の建設や運営などはTataが担う予定だという。

モディ首相も歓迎

インドのモディ首相は同日、Tata Sonsのチャンドラセカラン会長やPSMCの黄崇仁 董事長、朱憲国 総経理らと会談したことを写真付きで公式X(旧Twitter)で公表。写真に添えて「Tata SonsとPSMCのリーダーシップチームと素晴らしい会議を行った。両社は半導体製造プロジェクトの最新情報を共有することになった。PSMCはインドでの事業展開をさらに拡大することに熱意を示した」と投稿した。

  • 印モディ首相(ウェハ右)とPSMCの黄崇会長(ウェハ左)

PSMCがSBIとの宮城工場建設計画から撤退

インドでの半導体工場建設を計画する一方でPSMCは、SBIホールディングスと協力して宮城県に半導体工場を建設する計画に対し、9月27日付でSBIに対応が困難になり、見送る旨の連絡を行い、協業を解消した。

両社は2023年7月5日、日本国内での半導体工場設立に向けた準備会社(JSMC)の設立に関して基本合意。その後、2023年10月に、宮城県黒川郡大衡村に位置する第二仙台北部中核工業団地を建設予定地として3社ならびに宮城県の間で、政府からの一定以上の補助金を受領することを前提に半導体工場の建設に向けた基本合意書を締結していた。同工場は、2027年をめどに、電気自動車(EV)化で成長が見込まれる車載半導体の量産をメインとする方針で、投資額は総額8000億円を予定し、政府も初期投資時点で最大1400億円を補助する見通しだった。宮城県の村井知事は、SBIとPSMCの契約解消について「にわかには信じられなかった。大変残念で大きな衝撃を受けている」との談話を発表している。

PSMCが手がけるレガシー半導体が中国勢の攻勢による供給過剰もあり、2024年第2四半期まで5四半期連続で営業赤字を計上するなど業績悪化が提携解消につながっていると一部のメディアが伝えているが、宮城工場の場合、建設・運営費用は全額SBI側が負担し、PSMCは技術供与の役回りで、しかもPSMCはインドには進出することを決定していることから、赤字による経営難を理由とするには無理があろう。

なおSBIは引き続き宮城県に半導体工場を建設する方針を維持し、新たな協業相手を探すなど体制の再構築を図るとしているが、新たなパートナー探しは簡単ではなさそうである。