デル・テクノロジーズ(以下、デル)は9月25日、顧客やパートナー企業らがAIソリューションを検証できる新施設「Solution Center AI Innovation Lab(以下、AI Innovation Lab)」を大手町本社(東京都千代田区 Otemachi Oneタワー17階)に開設することを発表した。
実証・共創・学びをテーマに企業のイノベーションを支援
今回開設したAI Innovation Labは、企業ユーザーがAIやエッジ、マルチクラウド、データマネジメントを中心とした実証、共創、学びに取り組むための場として活用される。特に国内企業のイノベーション促進に貢献するものだという。
実証としては、グローバル企業であるデルならではのユースケースを産業別に集めているため、業種や目的に応じた事例の紹介、実証実験、デモなどが可能だ。取材時点で、デモとしては小売り、製造、金融、医療などの領域におけるAI活用事例が展示されていた。
また、共創については、同社はAIを活用したい企業とAIサービスを提供する企業をマッチングするプログラム「Dell de AI "デル邂逅(であい)"」や、大学と企業が協力して革新的なプロジェクトやイニシアティブを共同で実現するプラットフォーム「中堅企業向けDXプログラム(DXイノベーションコネクト)」を提供してきた。これらをはじめとする取り組みにより、さまざまなパートナー企業を含めたエコシステムを構築して、企業同士のマッチングを図るという。
3点目の学びとしては、ITの基礎からAIおよびデータサイエンスに関するキャリア形成に必要な幅広いスキル習得を支援する、デル・テクノロジーズ アカデミーを展開。同社のリーダーシップや業界ネットワークを活用したプログラムにより、次世代のITリーダーの育成にも貢献するとのことだ。
開設に際して、デル代表取締役社長の大塚俊彦氏は「百聞は一見に如かずなどと言うように、まずはご覧いただきたい。AI Innovation Labの開設を機に、共創をテーマとしてお客様の価値創造とイノベーションの促進に貢献したい」とコメントした。
小売り、 工場向けなど5つのデモを紹介
AI Innovation Labの開設セレモニーでは、展示されるデモの中からいくつか披露されたので、その様子を以下に紹介したい。なお、同施設はデルがグローバルに展開するInnovation Labのうち、初めてAIに特化した施設として稼働を開始する。今後は国内ベンチャーのデモを海外のInnovation Labにも展開するなど、国内企業の海外進出についてもサポートするとのことだ。
小売り向けソリューション
小売り業界向けには、AIを用いて人流を分析するソリューションや、セルフレジの活用を支援するビデオ分析、AIを利用した顔認識ソリューション「SAFR(セイファー)」を体験可能。SAFRは顔認識による施設の入退場管理や、来店者の属性分析、表情のデータによる感情認識などに使える。
医療向けソリューション
医療業界向けのソリューションとしては、疾患診断の支援やロコモティブシンドロームの検知などに使える運動機能評価「Dr Walkie」や、AIを活用した治療プラン「Cancer AI-Consultant」を展示している。Cancer AI-Consultantは大腸がん患者517人の臨床データなどを使ってAIモデルをトレーニングしており、これにより新規の患者に対して最も効果が高いと考えられる治療法を提案する。
余談だが、AI Innovation Labに入るとすぐに病院用の介護ベッドが目に飛び込んでくるため、非常に見応えがある。
工場向けソリューション
工場向けソリューションでは、カメラを用いたAIによる組み立て支援のほか、レーン上での検品などに利用可能なエッジAIによるカメラ映像分析、VRを用いたシミュレーションなどを見学できる。
金融向けソリューション
金融業界向けのソリューションでは、データレイクハウス、AIを用いた不正検知、生成AIを活用したコールセンターおよびカスタマーサービスAIなどを展示している。さらには、AIを用いた株価予測アプリも体験可能だ。これはインターネット上の公開情報などから企業を分析するほか、レポーティングまで実施するというもの。
スマートシティ向けソリューション
スマートシティの実現に資するソリューションの例として、モバイルを用いた生体モニタリングや、AIカメラによる安全管理などを体験できる。AIカメラは立入禁止区域に入った人を識別し警告したり、車いす利用者や白杖を持っている人を検出してサポートを促したりできる。
総合セキュリティプラットフォーム「Security Center」は監視カメラ、アクセス制御、アラームセキュリティを一元管理できるソリューション。リアルタイムのモニタリングなどに使える。データはオンプレミスで管理できるため、セキュリティやプライバシーの保護も図れる。
AIカメラを用いた現場安全管理「GAUDiEYE」は、指定したエリアに人が侵入した際に検知するソリューション。危険エリアや一定人数以上の立ち入りを制限したい区域の管理に使えるという。また、ヘルメットや手袋などの保護具が適切に着用されているかも確認できる。
ITインフラを用いた検証も可能
AI Innovation Labでは、NVIDIAをはじめ各社が提供するGPUサーバやストレージなどITインフラストラクチャを使ったPoC環境を無償で提供する。クライアント側からエッジ、クラウドまで幅広いAIポートフォリオを提供し、柔軟なインフラ構築を支援するとのことだ。