オートデスクは8月28日、免震装置メーカーのオイレス工業、ブリヂストンと、大手建設会社である、大林組、鹿島建設、清水建設、大成建設、竹中工務店の7社と協力し、同社のBIMソフトウェア「Autodesk Revit」向け構造用ファミリとして、新たに構造系の免震装置のファミリを公開したことを発表した。

  • オートデスクとパートナーの集合写真

    オートデスクならびに協力した7社による集合写真

これまで、設計業務を行うにあたって、設計事務所や建設会社それぞれが異なるソフトウェアや独自のルールでデータを作成していたため、各部材のモデルに含まれる属性データが異なり、設計から生産・施工・維持管理などの各プロセスでデータの連携や活用ができないケースが多かったという。

この課題に対して、2016年から大林組、清水建設、大成建設の3社によって発足されたのが「BIM Summit」であり、その中でも2017年に組織された「BIM Summit 構造分科会」にて構造設計用Revitファミリの共通化に向けた活動が行われてきた。

Revitファミリの共通化のメリットとしては、「開発リソースの分散」「データ流通の円滑化」「データの標準仕様化」などがあり、業界内のデータの利活用を円滑化することができるとする。

同分科会では、2018年12月より共同整備した鉄骨構造用ファミリの提供を開始して以降、2019年6月には鉄骨構造系部材ファミリの拡充を、2020年7月には鹿島建設も参画する形で、RC構造系の柱・梁ファミリを、さらに2022年2月には竹中工務店も参画し、基礎・杭ファミリ、壁・床のパラメータを発表。そして、2024年1月には中高層木造建築の普及・拡大に対応して木造のファミリを追加するなど、さまざまなファミリを追加してきた。

今回リリースされた免震装置のファミリは、前述の5社にオイレス工業、ブリヂストンの2社の協力を得る形で、免震建物の設計においてニーズの高い天然ゴム系積層ゴム、鉛プラグ入り積層ゴム、高減衰積層ゴムを整備した形だ。

  • 今回公開された免震装置

    今回公開された免震装置 (出所:オートデスク)

免震装置とは建物の下などに配置することで、建物に伝わる揺れを少なくし、人々の安心・安全な生活を支えている。免震装置の1つである免震ゴムは、薄いゴムと鉄板(鋼板)を交互に重ねた構造でできており、地震による激しい揺れをゆっくりした揺れに変える機能やエネルギーを吸収する機能を持っている。

  • 免震装置

    免震装置の概要 (出所:オートデスク)

これまで、そうした免震建物を設計する際、設計者はメーカーからカタログやCADデータを取り寄せて自前でファミリを作成する必要があり、メーカー提供の製品ファミリがある場合においても、設計符号の管理や型番の選択、配置の方法などが設計者の利用方法に合っておらず、設計フローに沿った使い方が出来ないという課題があったという。

この課題に対して今回、設計者・メーカーとも利用・整備がしやすいよう、入れ子の構成とした免震装置ファミリを整備。設計者が直接編集を行うホストファミリ(親ファミリ)には設計符号や型番といった設計情報を、メーカーが整備するネストされたファミリ(子ファミリ)にはゴム径やせん断弾性係数など装置の詳細な情報が含まれているとする。

また、親ファミリはBIM Summit 構造分科会にて、子ファミリはBIM Summit 構造分科会の監修の下、各メーカーにて作成。親ファミリおよび手順書はオートデスクのWebサイト、子ファミリは各メーカーのWebサイトにて公開するとのこと。

  • リリースファミリの概要

    今回リリースされるファミリの概要 (出所:オートデスク)

なお、オートデスクならびにパートナー各社は協力して今後も弾性滑り支承などの装置を順次リリースしていくとしているほか、オイルダンパー、制震ブレースなどの装置も順次整備していきたいとしている。