東芝デジタルソリューションズ(TDSL)とRevorfは8月26日、東芝デジタルソリューションズの量子インスパイアード最適化ソリューション(疑似量子計算機)「SQBM+」とRevorfの生体情報の高度計算処理技術および創薬分野の専門家によるデータ分析力を組み合わせる形で、多大な労力と時間を要する創薬困難なタンパク質のアロステリック制御機構を活用した「アロステリック創薬」分野において、創薬困難なタンパク質をターゲットとしたIT創薬ソリューションの提供へ向けた戦略提携契約を締結。東芝デジタルソリューションズがRevorfに出資を行ったことも含め発表した。
タンパク質に機能的多様性をもたらす立体構造や活性を特異的に調節する機構であるアロステリック制御機構を活用したアロステリック創薬は、従来の活性中心をターゲットとした創薬とは異なり、アロステリック調節因子が結合するタンパク質の部位(アロステリック制御部位)をターゲットにすることで、創薬ターゲットの増大、特異性の高い薬剤の創出、さらに副作用の低減の可能性など多くの利点がある一方で、各タンパク質ごとにアロステリック制御部位は異なっており、その場所を発見するためには、多大な労力と時間を要するin vitro実験が必要となるため、その代替としてコンピュータ上で治療薬の設計や評価を行うIT創薬の活用が期待されるようになっている。
これまでに両社は、2021年に東芝が実施した東芝イノベーションプログラムに基づき、Revorfとアヘッド・バイオコンピューティングの3社でSQBM+を活用したアロステリック創薬への適用技術の検証を開始。その後、Revorfと東芝デジタルソリューションズは2022年にSQBM+を活用する形で、インプットとしては創薬標的となるタンパク質の立体構造データを、SQBM+で扱えるようにグラフ構造に変換し、特定領域の要素を見つけ出すための定式化を実施。それを行列プログラムとする形で演算を行わせることで、どの部分に関係性があるかを導き出すことで、タンパク質のアロステリック制御の予測を高精度に行う技術を開発し、計算創薬への適用性を検証したことを発表していた。
その後も両社は、この予測技術の精度を高める研究を進め、in vitro実験での実証として、アミノ酸残基ごとのアロステリックサイトとしての可能性を数値化することで、アロステリックサイト候補(アミノ酸残基集合)の提案と、アロステリックサイトに結合する化合物の取得に伴う、タンパク質機能の阻害活性の評価を実施。従来、人手を介して行っていた場合、数年ほどかかる研究を半年から1年ほどに短縮することができるなど実用性が見えたこと、ならびに創薬メーカーなどから、今回の技術に対する市場からのニーズも確認したこともあり、今回、両社は戦略的提携に合意し、協業を推進していくことを決めたという。
また、同技術が対象とするのは低分子に限らず、中分子など幅広い分野に適しているとしており、今後の普及が期待できると両社では説明。今後については、RevorfがSQBM+によって可能になったアロステリック制御予測技術という形で、製薬会社への創薬支援や共同研究に適用することを進めていくとしている。