台湾政府経済部(日本の経済産業省に相当)は8月21日、郭智輝経済部長(大臣に相当)がAMDの上級副社長で台湾出身の王啟尚(David Wang)氏を中心とする代表団と会談し、AMDが台湾南部の台南市と高雄市の2か所に研究開発(R&D)拠点を設立し、台湾の大学や産業界と協力して研究開発能力の拡大を目指す意向を確認したことを発表した。

台湾政府経済部は、既存の国内製造体制とAMDの先進技術を統合することで今後も技術競争での優位性を保つことが可能になると指摘しているほか、郭部長はAMDに対して台湾が進める国際的な人材育成計画を紹介し、今後も国内外のAI人材の育成を継続して進めていくことを強調。AMDと台湾の大学との協力関係の強化を促したという。

この動きを受けて、台湾の経済紙である經濟日報が8月22日付けで、AMDの今回の投資額は86億4000万NTドル(約400億円)を予定しており、経済部のグローバル企業と台湾企業が共同で研究開発を行う取り組みを支援する「全球研発創新夥伴計画(グローバルイノベーションパートナーシップイニシアチブプログラム)」より33億1000万NTドルを支援する見通しだと伝えている。

新設されるAMDのR&Dセンターは、グローバル人材200人を含む400人ほどが雇用される計画で、研究のテーマはAIのほか、シリコンフォトニクス(SiPh)、ヘテロジニアス・インテグレーション(異種チップ集積)などが予定されており、33の台湾企業との協業も推進するとしている。

台湾政府は、台湾での「AIアイランド構築」を目指しており、その実現に向けて産官学連携で総額150億NTドルの投資を呼び込み、AI人材を1000人以上育成する計画を立てている。今回のAMDのR&Dセンターの設置もこの取り組みの一環だという。

AMDの台湾訪問団は今回の経済部訪問に先立つ形で20日に台南市長や高雄市長への訪問も実施。台南市役所の関係者によると、AMDは同市帰仁区の沙崙智慧緑能科学城(沙崙スマートグリーンエネルギーサイエンスシティ)に拠点を設置する予定ことに加え、国立成功大学と提携することも予定しているという。一方の高雄市では北部の亜洲新湾区(アジア・ニューベイエリア)に拠点を設置する計画で、地元の2つの大学と提携する見込みであるという。

  • 集合写真

    台湾政府経済部の郭部長(右から2人目)とAMDの王上級副社長(右から3人目)を中心とするAMD訪問団との集合写真 (出所:台湾政府経済部)