QPS研究所は、小型SAR(合成開口レーダー)衛星「QPS-SAR」シリーズの通算8機目となる「アマテル-IV」が、米・カリフォルニア州ヴァンデンバーグ宇宙軍基地の発射場「Space Launch Complex 4」(SLC-4)からスペースXのファルコン9ロケットによって8月17日の3時56分(日本時間)に打ち上げられたことを発表。そして同日6時32分に予定されていた軌道に投入され、その約2時間後には初交信に成功し、さらにその夜には収納型アンテナの展開を試み、無事展開されたことが確認されたことを報告した。
日本には現在、数十機の小型SAR衛星を軌道に投入してコンステレーション(複数の人工衛星を連携させて一体的に運用するシステム)を構築し、天候や昼夜の時間に左右されずに地表を観測できるSARを用いた地球の観測サービスを目指している企業が複数存在しており、QPS研究所もその1つだ。同社では、地球を取り囲めるように4つの軌道に9機ずつを配置し、合計36機によるコンステレーションを目指している。36機体制が完成すると、世界中のほぼどんな場所でも平均10分以内に撮影が可能となり、また特定の地域について平均10分に1回の定点観測を行えるようになるという(「準リアルタイムデータ提供サービス」が行われる予定)。なお今後のコンステレーション構築のスケジュールは、2027年度までに24機体制としている(36機体制構築時期の予定は未発表)。
同社の小型SAR衛星であるQPS-SARシリーズは、従来の衛星のおよそ20分の1の質量となる100kg台の小型軽量を特徴とし、コストも従来の約100分の1となっている。また、軌道の維持およびミッション終了後の軌道離脱の際に使用する推進システムには電気推進スラスタを採用。それらに加え、今回のアマテラス-IVを含む通算3号機以降のQPS-SARシリーズには、観測直後の膨大な生データを衛星内で画像化することで、衛星からのダウンリンク量を大幅に削減できる「軌道静止画像化装置(FLIP)」(宇宙航空研究開発機構(JAXA)とアルウエットテクノロジーが共同開発)や、静止衛星軌道を経由することで軌道上で生成した画像を地上へとより短時間で送信できる「衛星間通信」の機能を搭載する点も特徴だ。
QPS-SARのアンテナは、打ち上げ時には直径80cmほどに小さく折り畳まれているが、展開すると直径3.6mほどの大きさになる点が特徴である。今回は展開の実行後、機器の動作情報、ジャイロなどのセンサ類、アマテル-IVのアンテナの一部を撮影したセルフィー画像を総合的に判断した結果、アンテナが無事に展開できたことが確認できたという。ちなみに、QPS-SARのアンテナによるSAR画像の解像度は、日本の民間衛星としては最高レベルの精細度となるアジマス分解能46cm、レンジ分解能39cmを実現している(2023年6月に打ち上げられた「アマテル-III」が達成)。
QPS研究所は今後、引き続きアマテル-IVの調整を続け、初画像の取得を目指す予定としている。