楽天グループは8月2日、東京都内で記者会見を開き、ふるさと納税において仲介サイトでのポイント付与を禁止する総務省の方針に対する見解を示した。会見で取締役 副社長執行役員の武田和徳氏は「ふるさと納税がすでに国民に定着しているなかで、今回の措置は突然それに水を差すことになる。告示の撤回を求める」と反対姿勢を見せた。
「ポイント付与を禁止しても手数料は下がらない」
総務省は6月末、利用者にポイントを付与するサイトを通じて自治体が寄付を募ることを2025年10月から禁止すると発表した。自治体がサイト側に払う手数料がポイントの原資になっている可能性があることを問題視しているためだ。総務省によると、2022年度は全国自治体合計で4517億円の経費がかかり、寄付額に占める割合は47%と上限の5割に迫っている状況だ。
一方で、楽天側は「ポイント原資は自社で負担している」と主張。執行役員 渉外室長の関聡司氏は会見で「ふるさと納税については、(自治体に)ポイント原資の負担を求めていない。ポイント付与を禁止しても手数料が下がることはない」と断言した。
楽天グループの主張によると、ECサイト「楽天市場」の出店事業者に対して、カード決済手数料と決済以外のシステム利用料に加えて、基本の1%分のポイント原資の負担を求めているが、ふるさと納税を募集する自治体に対してはポイント原資を求めていないという。
関氏は「(総務省の告示は)自治体と民間企業の連携体制を否定するもので、自治体の自律的努力を無力化してしまう。地方活性化という政府の方針にも大きく矛盾している」主張した。
関氏は総務省の規制の進め方に対しても疑問を抱いているという。「以前より(総務省から)ポイント付与に何らかの規制をかけたいという話は聞かされていたが、制限の具体的な内容が明示されないまま、急にポイント付与を禁止する発表がなされ、大変驚いた」と不満を漏らした。
反対署名は185万件超 自治体では賛否両論
楽天グループは総務省の告示の撤回を求めるオンライン署名活動を6月28日から行っており、8月1日時点で署名総数は185万件を超えた。武田氏は「活動開始から1日で10万件以上署名が集まり、多くの国民が楽しみにしていることを再認識した。今後さらに多くの署名が集まった時点で、改めて総務省に告示の撤回を申し立てる」と方針を示した。
一方で、自治体の声はさまざまだ。楽天グループが同社のふるさと納税に参画している169自治体にポイント規制の是非についてアンケートを取ったところ、賛成が5%、反対が13%、中立な立場の自治体が82%だった。
中立な立場の自治体からは「ポイントの良い面、悪い面を踏まえた議論が必要」、「今後の状況を踏まえて総合的に判断したい」といった意見が寄せられ、今後の動向で総合的に判断したい自治体が多数だった。
総務省が8月2日、2023年度のふるさと納税による寄付額が1兆1175億円と、前年度から16%増えたと発表した。初めて1兆円を突破し、4年連続で過去最高を更新した。寄付件数も14%増えて過去最高の5894万件となった。
ふるさと納税は「生まれ故郷はもちろん、お世話になった地域に、これから応援したい地域へも力になれる制度」(総務省HP)だが、現実は魅力的な返礼品目当ての寄付は少なくない。今回の規制強化によって理想の制度に近づくのだろうか。
「告示の撤回を求めるために、総務省と継続的に対話を進めていく。民間の努力と知恵を活用し、自治体と連携して地域経済の活性化に寄与し続けていく」(武田氏)