楽天モバイルの契約回線数(MNO回線数)が堅調に推移している。2020年4月に携帯キャリアサービスを本格展開して以降、「月額料金0円プラン」を武器に契約回線数を伸ばし、サービス提供4周年を迎えた2024年4月には650万回線に達し、その後2カ月あまりで50万回線増え、6月16日に契約数が700万回線を突破した。

  • 楽天モバイルの契約回線数(MNO回線数)が堅調に推移している

    楽天モバイルの契約回線数(MNO回線数)が堅調に推移している

2022年5月に同プランの廃止を発表してからは契約数は落ち込んだが、KDDIから回線を借りる「ローミング(相互乗り入れ)接続」でデータ利用量の上限をなくした「Rakuten 最強プラン」の提供や、インターネット事業の既存顧客などへの営業攻勢による法人契約数の急増などさまざまな施策により、契約回線数を伸ばしてきた。

また同社は、つながりやすいとされる「プラチナバンド」を2024年6月頃から商用開始することを目指しており、主要都市部から順次エリアを拡大していく予定だ。

5月14日に開かれた楽天グループの2024年1~3月期の連結決算会見で、三木谷浩史会長兼社長は「通信品質の改善などにより契約数が伸びている。黒字化に向けて順調に推移している状況だ」と強調した。

一方で、楽天モバイルは法人向けにネットワークサービスやSMS(ショートメッセージサービス)配信サービスなど、周辺のサービスにも力を入れている。共通する強みは「高品質で低価格」。4月末に開催されたJapan IT week【春】で、楽天モバイルのブースに足を運んでみた。

  • 楽天モバイルの展示ブース:Japan IT week【春】

    楽天モバイルの展示ブース:Japan IT week【春】

高速・低価格・広範囲の「KŌSOKU Access」

楽天モバイルは法人向けに5つの固定回線によるネットワークサービスを提供している。

ダークファイバーを使用した高速インターネット接続サービス「KŌSOKU Access」とコンセントに挿すだけで利用できる据置型ルータの「Rakuten Turbo」に加え、VPN(Virtual private network:仮想プライベートネットワーク)サービスやWDM(Wavelength Division Multiplexing :波長分割多重方式)専用線サービス、IPトランジットサービスといったサービスまで提供している。

  • 楽天モバイル法人ネットワークサービス全体像 出典:楽天モバイル

    楽天モバイル法人ネットワークサービス全体像 出典:楽天モバイル

特に担当者が力説していたのがKŌSOKU Accessだ。顧客のアクセス回線ごとに専用の光ファイバーを敷設し、法人向け高速インターネット接続サービスを提供するもので、接続点での混雑回避を実現するという。

「コロナ禍で変化したワークスタイルの定着やDX(デジタルトランスフォーメーション)などにより、今後さらにデータ量が増加することが予想される」(楽天モバイル担当者)

同サービスはSRv6を使用した独自ネットワークを展開しており、回線障害時は瞬時に迂回ルートへ切り替える。提供エリアは一部を除く全国で「全国に張り巡らされた楽天モバイルのネットワークを生かした広範囲なサービス提供を実現する」とのこと。

  • KŌSOKU Accessの特長 出典:楽天モバイル

    KŌSOKU Accessの特長 出典:楽天モバイル

もう1つの特徴は低価格を実現している点だろう。1Gbps、10Gbpsの2つのプランを、それぞれ月額1万9580円、同14万9600円(いずれも税込)で提供している。

  • 11Gbpsプランにおける他社比較「(固定IP1個/1Gbpsでの比較。A社、B社それぞれのプラン料金の比較。2024年4月時点。出典:楽天モバイル

    1Gbpsプランにおける他社比較「(固定IP1個/1Gbpsでの比較。A社、B社それぞれのプラン料金の比較。2024年4月時点。出典:楽天モバイル

また、専任の保守チームが、万が一のトラブルを支援し、ネットワーク稼働率99.9%をSLA(Service Level Agreement:サービスレベル合意)で提供する。「インフラ管理者が足りないといった課題も解決し、今まで高速インターネットを利用できなかった顧客に新たな選択肢を提供できる」とのことだ。

SMS送信サービス「Symworld CPaaS SMS API」

「Symworld CPaaS SMS API」は、携帯電話やスマートフォンに、SMSを一括または個別に送信し、企業と顧客のコミュニケーションに使われる法人向けサービス。顧客企業は自社のパソコンやシステムから、 複数の携帯電話やスマートフォンの番号そのものにダイレクトに全角70文字のSMSを送ることができる。

SMSは、他の連絡手段と比較しても高い開封率、送信ハードルの低さ、利便性の3点から近年注目を集めているという。デロイト トーマツ ミック経済研究所によると、SMSの配信数の年平均成長率は約40%で2026年には140億通の配信数になると予測されている。

SMSの主な利用用途として「通知」「認証」「マーケティング」の3つがある。SMSは開封率が88%(出典:デロイト トーマツ ミック経済研究所)と高いため、通知やアンケートとったマーケティングに利用される例が多く、またキャッシュレス決済の際の本人認証やアプリの登録時に活用されることも多い。

KDDIなど大手キャリアもすでに参入しているサービスだが、楽天モバイルは「自社開発」「低価格」といった点に強みを持つ。楽天グループがSMS送信サービスを独自に開発し運営しているため、「国内全キャリアと直接接続でき、高到達率・低遅延で送信できる」(楽天モバイル担当者)という。

  • SMS送信サービス「Symworld CPaaS SMS API」 出典:公式ホームページ

    SMS送信サービス「Symworld CPaaS SMS API」 出典:公式ホームページ

また、提供価格については初期費用と月額利用料は0円からで、SMSの送信料は1通あたり8円と業界最安級だ。

楽天グループ自体も同サービスを導入している。EC事業の部門での導入事例としては、SMSでドライバーと車両の紐づけ管理を実現している。具体的には、ドライバーが車両に乗り込んだ際に、本人の指定電話番号にSMSを送信。指定車両に乗り込んでいるドライバーの本人確認を行う。これにより、指定車両と指定ドライバーの入れ違いを防止、人員管理の効率化につなげている。

楽天モバイルは今後、AI(人工知能)といった最新の技術と組み合わせたサービスも拡大していく方針とのことだ。