森田考則・ヤナセ社長「お客さまの信頼を得るためにも、高級車ディーラーとして他とは一味違う『人対人』のコンタクトを」

多様化する価値観に対応

 4月1日に社長に就任した私の使命はヤナセグループの社員とそのご家族を心豊かにすることです。

 1990年代の半ばから日本経済は上向かず、賃金も上がりませんでした。それは日本企業の国際競争力の低下を意味しています。その意味では、これまでのような輸出牽引型のエコノミーではなく、消費牽引型のエコノミーに変えていく必要があります。そして、それを牽引するのは富裕層の方々です。

 この富裕層の方々にいかに信頼していただくか。これが何よりも重要です。最上質な商品・サービス・技術があってお客さまに信頼され、1日でも長くクルマに乗っていただいて消費をしていただく。ひいてはそれが当社の社会貢献にもなります。

 今後、自動車業界は、価格はもちろん、自らの手で運転して楽しみを得るアナログ的な要素と自動運転で自らは運転せずに車内で有意義に過ごしたいというデジタル的な要素といったように多様化していくでしょう。我々はそれらに対応できる構えをしておかなければなりません。

 当社は2025年に創業110周年を迎えますが、創業者の梁瀬長太郎や中興の祖・梁瀬次郎の志を受け継いで「〝夢〟と〝感動〟あふれる『クルマのある人生』を創る」ことを現在の企業理念に掲げています。ものづくりはメーカーが手掛けますが、我々はその商品をお預かりし、その後のお客さまの人生を一緒に創り上げるのです。

フェラーリ事業にも参入

 今後はお客さまの価値観は多様化していきます。これまでのようなマス(大量)の世界にはならないでしょう。ですから台数などの量だけでなく質も重要になります。当社がフェラーリ事業に参入したのもその一環です。

 同時にデジタル技術も間違いなく進展していきます。当社もIT分野にはかなり積極的に投資してきました。ただ、「人対人」という機軸はこれまでもブラさずにやってきましたし、今後もブラすことはありません。お客さまに最初に接するのは当社のセールススタッフやメカニックであるからです。この人対人のコンタクトは他社とは一味違うと思っています。

 お客さまそれぞれの価値観やニーズに合った最高のサービスや体験を提供することで、全社員が働き甲斐と喜びを感じて仕事をし、その社員を支える家族も同じように誇りを感じることができる会社にしていきたいと思っています。

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