働き方改革関連法の改正によりトラックドライバーの労働時間の上限が制限され、いわゆる「物流の2024年問題」が喫緊の課題となっている。ドライバーの労働環境の改善が期待される一方で、一人当たりの走行距離が短くなり長距離の運送が困難になるほか、物流業者の売上やドライバーの収入の減少などが懸念されている。
NTTデータはこのほど、物流の2024年問題の根本的な原因を解説するとともに、同社が検討している中継輸送に関する取り組みを紹介した。
物流2024年問題の中心は企業間輸送、業界構造の裏にある課題とは?
「物流の問題」と聞くと、ネットショッピングの利用拡大に伴う配送の増加や、再配達の問題を思い浮かべる人も多いだろう。しかし、これらの市場はトラック運送業の約19兆円の市場のうち約3兆円であり、大手事業者の寡占市場であるため、市場全体で見るとそこまで深刻な課題とは言えないという。
一方で企業間輸送(B to B物流)は19兆円のうち約16兆円と大規模。16兆円のうち大手・中堅事業者は4兆円にすぎず、12兆円は中小運送事業者が占めている。このように、物流の2024年問題で対策すべき重要な市場は、企業間輸送を担う中小運送事業者である。
運送事業者数の内訳を見ると、中小企業に相当する従業員300人以下の事業者が99.5%。従業員20人以下の事業者が占める割合は全体の70%だ。こうした中小規模の事業者では、多くの場合デジタル化が進んでいない。現在でも紙による契約や電話・FAXを使った受発注が主流となっている。
運送業者においてはドライバー不足も顕著だ。物流業界の2024年問題に加えてドライバーの高齢化などにより、2030年時点で約34万人のドライバーが不足すると予測されている。しかし、ドライバー不足が問題であるにもかかわらず、荷役や荷待ち、附帯作業(検品や仕分け、ラッピングなど)といった運転以外の作業におよそ2割の時間を費やしているという。
さらに、ドライバーの労働災害は本来の業務である運行ではなく、半数以上が荷役作業によって引き起こされているそうだ。割合としては全体の65%に相当し、労働災害の発生件数は年々増加傾向にあるとのことだ。また、15日以上の休業を必要とする事故は全体の8割を超え、1カ月以上の休業が必要な事故は54%。
NTTデータ コンサルティング事業本部で戦略コンサルティングを担当する南田晋作氏は運送・物流業界の問題について「ドライバーの数が足りていない状況の中で、ドライバーに運転以外の作業をさせ、その作業中に事故が発生し長期休業を余儀なくされるなど、本末転倒な状況」だと指摘していた。
同氏は、企業間輸送で非効率性が生じる背景として、「運賃固定による弊害」と「強すぎる荷主による業界構造の硬直化」を紹介した。前者は、業界内で従来使われるトンキロ法による運賃計算のために起こる弊害だ。トンキロ法とは荷物の重量と運送距離によって運賃を計算する手法であり、運送事業者を待たせたり、他の業務を依頼したりしても運送費が変わらないため、コスト削減を狙う荷主が自社の都合を押し付けやすい構造があるそうだ。
後者は、中小事業者が多いという状況から荷主の力が強くなりやすいことによる弊害。運送業者は荷主からの仕事を失いたくないために、忖度して効率性が犠牲になりやすいという。
物流業界全体では、より少ないドライバーでより多くの荷物を運ぶための効率化を目指すべきであるにもかかわらず、現状としては荷主にとっての個別最適化や、物流事業者にとっての個別最適化が図られやすい状況であるため、非効率の解消が進みにくい。