モノのインターネット(IoT)は、すべてがインテリジェントでコネクテッドな未来を約束し、私たちの生活の仕方に影響を与え、斬新なビジネスモデルを推進し、それが関わるほぼすべての業界に革命を起こします。
2023年はスマートホーム技術の大幅な向上が見られ、2024年もこの傾向が続くでしょう。スマートホームデバイスが相互に通信するための標準化された対応策である「Matter」は、3つ目のバージョンアップで異なるメーカーのデバイス間の安全でシームレスな接続を実現します。Matter認定製品を導入する企業が急速に増えています。これは、新しいデバイスが既存のエコシステムでどのように動作するか(または動作しないか)を心配する消費者の大きな懸念に対処するものです。2024年末までに、世界中でコネクテッドIoTエンドポイントの数が170億を超えると予想されています。驚異的な新しい特徴と性能がこの普及を促進しています。
人工知能と機械学習(AI/ML)によって、メーカーは日常的な習慣や好みから学習できる新しい種類のデバイスを開発できるようになります。つまり、私たちが家庭に導入する技術は、私たちが望むものに対して、より応答性があり(そして正確に)、より良いユーザー体験を提供することになります。2024年には、インテリジェントなセンサーと学習アルゴリズムによってエネルギー消費をより適切に管理できるようになり、デバイスの効率も向上するでしょう。これは、ライフスタイルや季節のパターンに基づいて家庭のエネルギー消費量を調整するコネクテッド方式のサーモスタット(温度制御装置)でも起きています。
とはいえ、デバイスを真にスマートにするのはインターネット接続であり、Wi-Fiはデバイスをインターネットに接続するための事実上の無線プロトコルとなっていますが、その到達範囲と電力効率は、バッテリー駆動または低電力デバイスには理想的と言える水準に達していません。
これらの要求に対応するために、IEEE 802.11ah規格に準拠し、Wi-Fi Allianceによって認定されたサブGHzプロトコルであるWi-Fi HaLowは、急速にIoTエコシステムの最重要部分になりつつあります。
Wi-Fi HaLowは、開発者達も注目しており、CES 2024で大きな注目を集めました。私たちがラスベガスで見られたトレンドとWi-Fi HaLowが2024年にIoTをどのように変革するのかを以下述べていきます。
フォーカスオンスマートカメラ
Wi-Fi HaLowは、企業向けの最新スマートセキュリティカメラの多くで推奨されるプロトコルとして登場しました。Wi-Fi HaLowは、その到達距離の長さと超低消費電力性能により、スマートカメラをこれまでに到達したことのない場所に設置し、より少ない充電回数でより小型のバッテリーで動作させることができます。
Wi-Fi HaLowのための標準規格がないため、スマートカメラの展開方法によっては、異なる無線技術を利用する場合と比較して、追加の規制の対象となる可能性があります。
産業用IoT(IIoT)革命
Wi-Fi HaLowの障害物を通過し、要求の厳しい環境で機能する能力は、さまざまなIIoTおよびファクトリーオートメーションの用途に適しています。Wi-Fi HaLowの長距離サブGHz特性によって提供される効率的な接続性は、工場、倉庫、インテリジェント製造プロセスに導入されるセンサー、機械、IoTデバイスにとって有利であることが証明されています。
Wi-Fi HaLowの低い周波数帯域は、従来のWi-Fiと比較してより穏やかなデータ転送速度をもたらす可能性があり、開発者はWi-Fi HaLowデバイスを既存の産業用システムおよびプロトコルと統合するという最初の課題に直面する可能性がありますが、綿密な計画とカスタマイズされたソリューションにより、Wi-Fi HaLow IIoTデバイスは効率性、生産性、および費用対効果において大きなメリットを引き出すことができます。
AIとIoTの融合
AI駆動型分析は、IoTによって生成された膨大な量のデータから貴重な洞察を抽出し、運用を最適化し、予測メンテナンスを可能にし、意思決定プロセスを効率化させるのに役立ちます。
調査会社のABI Researchは、AIの影響を強調し、エッジAIの配備が今後2年間で15倍に急増すると予測しています。このトレンドは、AIと統合されたWi-Fi HaLow対応IoT製品の普及につながると予想されています。
スマート農業
Wi-Fi HaLowの到達距離が長いという性質は、既存の無線インフラによってカバーされていない農業や環境の監視のために、長距離にわたりデバイスを接続するのに適しています。
ネットワークインフラの革新
Wi-Fi HaLowは、従来の2.4GHz/5GHzバックホールに加えて、新たなバックホールとしてメッシュアクセスポイントに採用されています。制御プレーンとして機能するWi-Fi HaLowバックホールは、低スループット、小さなパケットのネットワークトラフィックを監視でき、2.4GHz/5GHzバックホールは、高帯域幅、低遅延の用途に対応します。これにより、チャネル使用率が向上し、ネットワーク効率が向上します。
Wi-Fi HaLowは、IoTハブやルーターのバックホールとしても採用される予定であり、IoTハブ配備の柔軟性と到達範囲を向上させるとともに、障害物に対する通過性にも優れています。
Wi-Fi HaLowは1つの技術として発展し続けており、現在進行中の標準化プロセスはネットワーク間の互換性、相互運用性、信頼性の高い性能を保証する上で重要な役割を果たしています。性能要件と認証プログラムの標準化を通じて、Wi-Fi HaLowネットワークインフラ技術のダイナミックなエコシステムが形成されようとしています。
進歩と関心の高まり
Wi-Fi HaLowは、その到達距離の長さと優れた通過能力により、資産追跡、物流、在庫管理、輸送中の商品のリアルタイム監視などの分野で効果的であることが証明されています。多くのアプリケーションはすでに何年も前から導入されていますが、まだ開発中のものもあります。例えば、Wi-Fi HaLowは法令順守を必要とする患者モニタリングなどのヘルスケア用途に検討されています。Wi-Fi HaLowを幅広い使用事例の全体にさらに適用できるようにするには、標準化、エコシステムの開発、相互運用性が今後不可欠になります。
スマートシティインフラの開発
Wi-Fi HaLowの到達距離が長いという性能は、スマートメータリング、環境モニタリング、インフラ管理を含むスマートシティ構想のために、都市部全体でデバイスを接続するのに適しています。
IoTコネクティビティのギャップを埋める
Wi-Fi HaLowは、最大3kmの距離に到達する能力で注目を集めており、その到達範囲の能力に関する以前の懸念に対処しています。この改善により、産業環境からスマートシティ、スマート農業まで、幅広いIoTアプリケーションにより適したものになります。
さらに、Wi-Fi HaLowの周波数の利用可能性が世界的に増加していることは、その展開の可能性を高めています。この広範な可用性により、Wi-Fi HaLowネットワークを地域間で実装する際の柔軟性と拡張性が向上し、IoTソリューションとしての魅力がさらに高まります。これらの開発は、デバイスの相互運用性と規制当局による規格への準拠を確保する取り組みと相まって、Wi-Fi HaLowの可能性を最大限に活用するために不可欠です。
障壁と機会 - 普及の現実
Wi-Fi HaLowは、到達距離の長さ、高スループット、低電力の接続を必要とする使用事例で大きな期待が寄せられています。到達距離が長く低消費電力の使用事例における有用性に対する認識が高まっている一方で、新しい規格を導入すると、既存のIoT製品との互換性に関する懸念が生じます。個人的には、これに対処するために、2024年にはさらに多くのMatter製品が発表されると考えています。
Wi-Fi HaLowへの切り替えには、技術と企業慣行の両面における慎重な計画と調整が必要です。企業はまず、現在のネットワーク構成を見直して、HaLowの到達距離の延長と効率性がどの場所に役立つかを確認する必要があります。これには、接続性の弱点を特定するためのチームによる議論が含まれます。
Wi-Fi HaLowは既存のWi-Fiと上手く融合し、統合を容易にする一方で、他の技術との互換性の問題があるかもしれません。WPA3やAESなどの強力なセキュリティ機能を備えているにもかかわらず、Wi-Fi HaLowは依然として潜在的なセキュリティ上のリスクに直面しています。したがって、企業はHaLowの仕様に合わせてセキュリティ対策を更新し、徹底的に確認する必要があります。
スマートホーム、産業および企業の各アプリケーションでWi-Fi HaLowの勢いが増していることは、2024年以降に新たな導入と使用事例が出現すると予想されるため、業界がこれらの現在のトレンドを包括的に理解する必要があることを意味します。
本記事はモースマイクロが「Forbes Online」に寄稿した技術記事を邦訳・改編したものとなります