韓SKグループは6月末、京畿道利川市のSKMS研究所(SK グループの経営方針を議論・策定するための研究施設)にてチェ・テウォン会長、チェ・ジェウォン首席副会長、SK hynixやSK Telecomを含むSKグループの主要会社の最高経営責任者(CEO)20人余りが参加して2日にわたり、「経営戦略会議」を開催し、グループとして今後の市場の変化を先制的に備え、成長機会の確保に向けてバリューチェーンの整備など根本的な体質質変化に乗り出すことを決めたことを明らかにした。

半導体および関連事業に関しては、SK hynixが2028年までに103兆ウォン(約12兆円、1ウォン=0.12円換算)を投資し、事業競争力の強化とともに、AI・半導体バリューチェーンに関連する系列会社間のシナジー強化に向けてグループ内に横断的組織「半導体委員会」を新設することを決めたという。

  • SKグループの経営戦略会議の様子

    SKグループの経営戦略会議の様子。スクリーンに映っているのが出張中の米国からリモート出席し、各グループ企業のCEOらに指示を出すチェ会長 (出所:SK Group)

この103兆ウォンの投資額のうち約80%(82兆ウォン)をHBMなどAI関連事業分野に投資する計画とするほか、半導体委員会の委員長にSK hynixのクァク・ノジョン社長が就任し、グループ全体で半導体およびその応用戦略について議論する予定としている。

SKグループの関係者によると、「AI時代を迎え、今後の2~3年間、HBMなどAIエコシステムに関連するグループ保有事業分野に大規模な投資が必要だと予想される」とする議論が交わされた模様である。

今回の会議では、収益性の改善と事業構造の最適化、シナジー向上などを図り、2026年までにグループとして80兆ウォン(9兆3000億円)の財源を確保し、AI/半導体など成長分野への投資や株主還元などに活用することが決められたほか、運営の改善を通じて3年以内に30兆ウォンのFCF(余剰キャッシュフロー)を作り、負債比率を100%以下にするという目標も盛り込まれたという。

開催時期に米国出張中と重なったチェ会長はリモートで参加し、「来るべき大変革時代に備え、先制的で根本的な変化が必要だ」としたうえで、「今、米国ではAI以外は話すことがないというほどAI関連の変化の風が激しい。このような状況下において、SKグループ保有能力を活用してAIサービスからインフラまで『AIバリューチェーンリーダーシップ』を強化しなければならない」と強調したという。

このチェ会長の渡米についてSKグループでは、Amazon、Intel、Microsoft、OpenAIなどの先進AI/IT企業のCEOらと会い、AI半導体などデジタル事業でのコラボレーション案を議論したと発表している。

大規模言語モデル(LLM)、産業用AIなど具体的なAI事業の拡大に向けた方向性を模索した模様で、例えばAmazon本社ではアンディ・ジェシーCEOと会談し、AIや半導体での協力について議論した模様である。Amazonは近年、独自のAI半導体を開発するなど、半導体の設計からサービスの提供までAIの全領域に事業の拡大を進めている。これらのAI半導体はHBMを採用することから、同分野で他社をリードするSK hynixとの協力の模索などが行われたようだ。このほか、IntelではPat Gelsinger CEOと会談し、協業の推進などを話し合った模様である。