エトリアは7月1日、設立に際して記者説明会を開いた。同社はリコー(持ち株比率85%)と東芝テック(持ち株比率15%)のオフィスプリンティングおよびMFP(Multifunction Peripheral:複合機)事業を統合し、開発と生産を担う。説明会では、同社の代表取締役 社長執行役員に就任した中田克典氏が今後の事業展開を紹介した。

  • エトリア 代表取締役 社長執行役員 中田克典氏

    エトリア 代表取締役 社長執行役員 中田克典氏

社名「ETRIA」の由来

中田氏はまず、社名の英語表記「ETRIA」に込めた思いについて説明した。この社名は社内からの公募によって決められたという。挑戦を表す"Try"を中心に据えながら、永遠に挑戦し続ける志を表す"Eternal"、革新的な"Innovation"、業界の垣根を超えた技術力を表す"Alliance"の頭文字をそれぞれ取り、ETRIAとした。

タグラインには、顧客に寄り添うことが価値創造の原点であることを示すべく、「Your Digital Device Partner」と記している。ロゴは全体を斜めにし、アクティブに挑戦し続ける印象と、新しい時代を切り開く息を意を表現。カラーは未来に向けて前進し続ける情熱と意志の強さを表したそうだ。

  • エトリア概要

    エトリア概要

ペーパレス時代にオフィスプリンティングの新会社を設立した理由

言うまでもなく現代はペーパーレス化やデジタル化が進み、プリンティング業界の規模は縮小している。特に利益率の高い消耗品の売り上げは減少傾向にある。しかし、そうした中でも国産のプリンティング機器メーカーが世界の市場シェアの約8割を占めており、プリンティング業界は日本の重要産業の一つに挙げられるのだという。

一方で、顧客の要望も変化している。情報の安全性に対し要求が高まると同時に、ヨーロッパをはじめとして再生プラスチックの含有量やインクの原材料など、環境規制も徐々に強化されつつある。従来の一方通行の消費であるリニアエコノミーから、再利用を意識したサーキュラーエコノミーへの要望も高まっている。

こうした環境の変化の中で多様化する要望への対応に追われる中、一社単独ではエンジンや周辺機への新規投資が難しい。だからこそ、業界内で共創を促すための中心的な役割を担うとして、エトリアを創立したとのことだ。

  • 両社の既存ブランドを活用する

    両社の既存ブランドを活用する

「私が幼いころはトースターや掃除機が1台数千円で売られていた。しかし、現代は独自の技術や機能を搭載したものが数万円で売られている。環境が変わればさまざまなビジネスが生まれるはず。イノベーションのために投資して挑戦を続けなければ新しい価値は生み出せないだろう。私たちは投資するためのお金を集め、かつ、自分たちで生み出し、挑戦し続ける。それが他の業界にもプラスの影響を与えられるはず」(中田氏)

エトリアの事業概要と今後の計画

中田氏は続けて「リコーと東芝テックが共通のエンジンを開発することによって、ブランド間の競争が起こるかと聞かれることがあるが、そうではない。リコーと東芝テックの顧客は毛色が異なる」と説明した。

共にMFPを展開するものの、東芝テックが手掛けるe-BRIDGE Cloud ServicesはラベルプリンティングやPOS連携に強みを持つ。一方、リコーのRICOH Smart IntegrationはPFUをはじめオフィス業務を支える独自のエッジデバイスとソリューションが特徴的。

エトリアは競争力の強い共通エンジンを開発しながらも、多様な顧客の要望に対応可能なコントローラによって最適なインタフェースを実現する。これまで通りの顧客接点を維持しつつ提供価値の最大化を図る。

  • エトリアの展開

    エトリアの展開

同社は今後、既存事業に加えて新規で共通エンジンの開発やOEM(Original Equipment Manufacturing / Manufacturer)の開拓、新規事業の創出を進める。具体的な目標値は示していないものの、今後約3年間で4000憶円以上の売り上げ規模と安定した利益を生み出す体制の構築を目指すとのことだ。

同社は今後、サーキュラーエコノミーを実現するべく、ものづくりを抜本的に転換する方針だ。中田氏によると「これまでは集約拠点で機器を作っていたので、いかに組み立てやすいかを主軸に設計していた」そうだ。これを、分解して修理しやすいことを主軸とした設計へと変更する。また、リサイクル・再生ビジネスを経て価値が減少するのではなく、付加価値によって提供する価値を向上できるようなビジネスモデルを生み出すとしている。

  • サーキュラーエコノミーの実現を図る

    サーキュラーエコノミーの実現を図る

中田氏に今後の経営方針と思いを質問した。すると、以下のように返ってきた。

「私はDVDや半導体、太陽光電池の業界を見てきたが、どの業界も日本企業はマーケットシェアが厳しくなると価格競争に陥っていた。投資した分の価値をお客様に転換できないので、パイを大きくせずに取り合ってしまうのだろう。それが当たり前になってしまうと、その業界に未来はなくなる」

続けて、「冒頭に紹介したように、家電もAIや独自の機能を搭載した高付加価値なものが増えている。私はハードウェアとソフトウェアの高度化は両軸だと思っている。利益を生むのはソフトウェアだが、イノベーションを生むのはハードウェア。ハードウェアが無ければソフトウェアは利益を生み出せないと信じているので、苦しい業界ではあるが、ハードウェアメーカーとしての成長を遂げたい」と述べていた。

  • 中田克典氏