アストロスケールは6月14日、2024年2月より進めている商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J(Active Debris Removal by Astroscale-Japan)」のミッションにおいて、5月23日に対象デブリまで約50mの距離まで接近することに成功し、さらにその距離において定点観測を実施したことを発表した。

運用を終了した衛星やロケットなどのデブリは、地上との通信もできず、現在の状況を把握することが難しい。そのため、そうしたデブリへの安全な接近および捕獲を実現するためにも、対象物であるデブリの劣化状況や回転の速さなど、軌道上での状態を把握する必要があり、今回のミッションでは、そうした実際のデブリの除去に向け、安全な接近手法を実証し、手を伸ばせば届く距離までデブリに接近し、その状態を調査することを目的としている。

今回のミッションで対象としているデブリはGOSATを打ち上げた「H-IIAロケット15号機」の上段。全長約11m、直径約4m、重量約3トンの大型デブリで、接近・近傍運用を実証し、長期間軌道上に存在するデブリの運動や損傷・劣化状況の撮像を行うという内容となっている。

最終的にADRAS-Jと対象デブリの距離は手を伸ばせば届くほど、とも同社が表現するほどに接近する予定で、今後は、デブリの周回観測に加え、そうしたさらなる接近などを予定しているという。

  • 対象デブリの後方約50mの距離から撮影した画像

    ADRAS-Jが2024年5月に、対象デブリの後方約50mの距離から撮影した画像 (C)Astroscale