半導体ウェハやフォトマスク収納容器を手掛ける台湾の家登精密工業(Gudeng Precision Industrial)が、日本の福岡県久留米市にある久留米広川新工業団地に用地を取得し、年内にも工場の建設を開始し、TSMCの熊本工場(JASM)をはじめとする日本の半導体工場に向けた生産拠点とする計画を発表したと複数の台湾メディアが報じている。

この新工場は2025年に完成・稼働する予定で、300mm FOUPなどのウェハ搬送容器を製造する計画で、将来的にはEUVポッド(EUVリソグラフィ用ASML認定フォトマスク収納容器)の製造も行われる見込みだという。

同社の邱銘乾董事長(会長)は、「顧客から、サプライチェーンの中断による操業リスクを回避するために、すでに稼働している台湾と中国以外に、米国、日本、ドイツにウェハ容器製造工場を設立するよう強く求められており、そうした背景もあり、最終的に日本に製造拠点を設立することを決めた」と述べたという。

また「日本人社員の質や経験は台湾拠点の社員のものと似ており、欧米が半導体製造を復活させるのは少し先になると見られる中、日本が台湾から先端半導体プロセスを拡大する拠点になる可能性が高い。ドイツの顧客規模はそこまで大きくなく、欧州の労働組合も強いため、当面はフォローするつもりはない」と、日本を重視する姿勢も見せたという。

なお、同氏は久留米を選んだ理由について、3月の台湾花蓮地震で、久留米ロータリークラブの支援をうけ、その際知り合った日本人に勧められたことを指摘している。久留米はTSMC/JASMの拠点がある熊本から車で1時間ほどの距離にあり、土地価格が高騰し続けている熊本の半値程度の価格と割安感もあるほか、福岡空港にも近く、ソニーの熊本工場に加え長崎工場へのアクセスしやすいなど、幅広く顧客にアクセスできるメリットがあるという。