経済産業省傘下の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は4月15日、グリーンイノベーション基金事業による脱炭素・低炭素を目指す研究開発事業の一環として進めている「製鉄プロセスにおける水素活用」プロジェクトとして、新たに「直接還元鉄を活用した電気溶融炉による高効率溶解などの技術開発」を追加プロジェクトとして着手すると発表した。
この“直接還元鉄を活用した電気溶融炉による高効率溶解などの技術開発”は2024年度から2028年度までの5年度間にわたって実施する計画で、補助率は1/2の見通し(補助率はあくまでも予定)。
この新プロジェクトの実施予定先として、NEDOでは「日本製鉄」と「金属系材料開発研究開発センター」(東京都千代田区)の2者としている。研究開発プロジェクトが実施される5年間におけるNEDOからの研究開発支援規模は230億円の見通しとしているが、実際の研究開発予算は約384億円の見通しとなっていることから、不足分は実施者などが補う模様だ。
今回進められる研究開発プロジェクトは、鉄鉱石の水素直接還元と電気溶融炉・転炉の一貫プロセスによって、従来製鉄法である高炉法プロセスを代替できる、生産効率が高い製鉄プロセスを実現することを目指すものだ。同時に、この新手法によってできる製品となる“鉄”の不純物濃度を、現行の高炉法並みに制御する技術開発を実現することを目指す。例えば、リン(P)を0.015%以下にするなどの不純物濃度を実現することを目指す。この課題実現は現時点では、なかなかの課題と推定されている。
同時に、「電気溶融炉において副生するスラグを国内セメント用途向けに使えるレベルの高品質に制御する技術開発を実現する」ともしている。例えば、副生するスラグの酸化鉄濃度を3%以下にすることを目指す。この副生するスラグの不純物目標もかなり難易度の高いものになる見通しだ。
これら3つの技術課題を同時に実現するというなかなか難易度の高い研究開発プロジェクトとなる見通しだが、その一方で、現行の高炉・転炉による製鉄法によって、脱CO2化を図ることは、当然限界があるために、未来を切り開けないとの見解の下、新しい製鉄法を見出すというのが、今回の“製鉄プロセスにおける水素活用”プロジェクトになるという。新しい製鉄法の開発に向けて、複眼的な視点の研究開発プロジェクトを進めることで活路を見出し、世界的に見ても欧米や中国などの製鉄メーカーに先駆けた脱CO2手法を取り入れた製鉄法を確立することを目指す取り組みとなる、