米Markforgedの日本法人マークフォージド・ジャパンは、同社の最新工業用カーボンファイバー3Dプリンタモデル「FX10」などを活用することで“分散型ものづくり”を可能にする同社の技術「Digital Source」についての説明などを行った。
同社は、カーボンファイバーやコンポジットなどの樹脂に対応した3Dプリンタ「Mark Two マーク2」「X7」「FX10」「FX20」や金属3Dプリンタ「Metal X」「PX100」など、さまざまなニーズに対応できる3Dプリンタを提供してきた。中でもFX10は、2023年11月に発表された最新世代に位置づけられる産業用3Dプリンタで、今回、日本で初めて公開されたモデル。樹脂材料が表面を形成し、カーボンファイバーなどの繊維材料が内部を補強することで、強度が高まりABS樹脂と比較して約20倍の強度をもつことができ、アルミ以上の強度も実現可能になるという。
3Dプリンタ技術は登場からおよそ30年にわたって研究開発が続けられ、当初はデザインや試作などの分野に使われていたものが、生産ラインに求められるレベルの造形精度と速度を可能とするようになってきており、ものづくり現場へと活用範囲を拡大させていると同社では市場の状況を説明。適用分野も現在までにファクトリーオートメーション、ロボティクスや航空機、宇宙開発、自動車、医療などさまざまな領域で活躍されるようになっているとした。
同社の工業用3Dプリンタで標準ミッドレンジモデルと位置付けられるのが「X7」。高耐熱素材・スーパーエンプラに対応し、コンポジットプリンタの中では最大の造形容積を有し、高い稼働性および信頼性を提供するハイエンドの「FX20」の間の大きさとなる高速・自動化ミッドレンジモデル3Dプリンタとして開発されたのがFX10となる。FX10について同社は、ものづくりの現場において築いた活用実績を生かし、「強靭で正確なパーツを常にプリントする」という目的の追求に向けた、より製造現場に適合された設計となっていると説明している。
その主な特長としては、多岐にわたる現場向け用途に対応した連続カーボンファイバー強化パーツをプリントし、オンデマンドで提供することが可能な点。これにより造形者は、パーツのコストを最大90%削減できるほか、市場投入までの時間を数ヶ月から数日に短縮できるとする。また、実在庫をデジタル在庫に置き換えられるため在庫コストの削減や、工場のライン停止リスクの軽減も見込めるようになるだろうとしている。
さらに、モーションシステムから駆動ソフトウェアまで綿密な設計に基づいているため、工場の厳しい現場要件に適合する検証済みパーツをプリント製造することもできるという。
そのほか、デバイスおよびデスクトップ用の直感的なソフトウェア、トレーニング、組み込みコスト計算ツールを搭載したアディティブ・プラットフォームである「Digital Forge」上での動作により、使い始めたその日から費用対効果を確立することができるとのことだ。
このDigital Forgeは顧客の製造運用環境にシームレスに適合するように設計されており、FX10をはじめとする同社のポートフォリオ全体を通じて統一されたユーザーエクスペリエンス、デジタルウェアハウス、フリート管理を展開できるとしている。
このほか、同社はEIGERソフトウェア上で稼働し、必要な時に必要な場所で3Dプリントできるオンデマンド・パーツ供給プラットフォーム「Digital Source」の紹介も行った。同サービスは、マークフォージドの3Dプリンタを活用して造形したいユーザーが、クラウド上にアップロードされた設計データのライセンスを購入することで、遠隔地の3Dプリンタで造形した場合であっても、造形過程の情報をもとにパーツの品質を担保する仕組みを提供するもので、同社では3Dプリンタサプライチェーンのデジタル化を可能にしたとする。また、従来では難しかった3Dデータの所有者の知的所有権(IP)を安全に守り、管理できるようにもなるため、「分散型ものづくり」を安心して展開できるサービスになるともしていた。